みんな「値上げ」しているのに、なぜマックは「もう行きません」と叩かれるのかスピン経済の歩き方(3/5 ページ)

» 2024年01月24日 09時01分 公開
[窪田順生ITmedia]

忘れてはいけないマックとモスの事件

 忘れている人も多いだろうが、14年末にマックの異物混入事件が世間を騒がした。全国の店舗で、チキンナゲットなどの商品にビニール片や人の歯などの異物混入が続発した騒動だ。

 発覚から2日後に役員が「謝罪会見」を催したが、マスコミからはやれ「態度が悪い」「なぜ社長は出てこない」とボコボコに叩かれた。ネットやSNSでは「食の信頼を大きく裏切った」「怖くて子どもを連れていけない」なんて厳しい意見が飛び交い、株価もガクンと落ち込んだのはご存じの通りだ。

 ただ、この騒動、被害としては「アイスを食べた客がプラスチック片で口の中を切った」というもので、騒がれたわりには小さいものだった。それでもマックは社会的制裁を受け、業績も低迷した。

異物混入騒動で叩かれたマック(画像はイメージ)
「ビッグマック」(出典:日本マクドナルド)

 ファストフードであっても「食の安全」をないがしろにする者は万死に値する。そんな常識が広がってから数年経過した18年9月、今度はライバルのモスから食中毒の被害者が出た。

 長野県の「アリオ上田店」で4人が腸管出血性大腸菌「O121」に感染したと公表したかと思いきや、あれよあれよと被害者が増えていった。わずか2週間弱の間に、関東甲信の19店舗を利用した客の中に、28人のO121感染者が確認された。チェーン本部が納入した食材が原因だったと思われる。

 ご存じのように、食品を提供する店が、食中毒を発生させるのは一発「アウト」だ。行政から処分や指導を受けるのは当然だが、世論の目も厳しく、ネットやSNSも容赦なくボロカスに叩いて、社会的制裁を下す。

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