日本の賃金体系は、いまも定期昇給などの年功序列がベースになっています。社歴が長くなるにつれて賃金が上がっていくことが前提になっているので、ベテラン層と比較して若手のうちはどうしても金額が低く抑えられがちです。
社歴とともに年齢も上がっていくと、子どもの教育費など何かと物入りになりますが、それらの費用はあらかじめ想定されるものでもあるため、貯蓄などでカバーしやすい面もあります。一方、若年で収入額が少なくかつ貯蓄もこれからという層は、物価高の影響をより大きく受け、目前の生活が厳しい状況に追い込まれがちです。
個別に状況は異なりますが、少なくとも一律ではなく若年層や賃金が低い人たちにより手厚くするなど丁寧に配分しないと、賃上げによって労働者間の貧富の差が広がる事態になりかねません。
経団連の「23年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果」によると、ベースアップの具体的配分方法は一律定額配分が53.1%、一律定率配分が16.8%。その一方で、若年層(30歳程度まで)へ重点配分するとの回答も30.2%ありました。
野村証券は、全体の賃上げが3%であるのに対して非管理職は平均7%強、入社3年目までの社員については平均で16%にするなど属性に応じて配分する方針を示したと報じられています。もし、会社が社会的責務として物価高に苦しむ社員の支援に取り組むのであれば、効果的な配分方法のあり方について検討する必要があります。
ただ、賃上げ分を重点配分したとしても、そもそもの賃上げ額が低ければ状況は好転しません。望ましいのは5%と言わずより大きな賃上げを実現することですが、そのためには賃上げに見合うだけの生産性を向上させることも求められます。
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