このトレンドは、業界最大手ダイソー(大創産業)の動きをみても分かる。ダイソーは非上場のため直近の業績データを開示していないが、22年度は7%超の増収で順調に業容を拡大。この拡大を支えているのも、300円業態の「Standard Products」「THREEPPY」であり、100円にこだわらない展開が奏功しているとみていいだろう。
ダイソーの23年2〜9月の店舗数推移をみると分かるが、300円業態の店舗は2業態合わせて113店増加。100均のダイソー業態は28店の増加にとどまり、明らかに300円業態の出店にシフトしている。また、ダイソー業態でも100円商品を主軸にしているが、200円、300円、500円といった価格帯を増やすことで品ぞろえの多様性が広がり、これまで以上に大型店を構成できるようになった(図表4)。
デフレからインフレへの環境変化が価格帯の多様性を容認しつつあり、100円に固執することが、必ずしも均一ショップに対する消費者のニーズではないのだろう。消費者が均一ショップに求めているのは、「100円であること」ではなく「相対的なコスパ」であり、「この値段でこんな商品が買える!」というサプライズなのである。原材料などのコストが上昇する中で、100円という価格キャップを前提とすれば、品質の低下や限定的な品ぞろえは、消費者が求めるサプライズの低下を引き起こしかねない。
この10年を振り返れば、もともとの生産国だった中国での生産コストは急騰が続く中、他のアジア諸国にシフトさせながら、各社は100円商品の開発にしのぎを削ってきた。今回のインフレ転換期のコスト急騰を、企業努力だけでやり過ごせるほどの余裕は残っていないのである。
100円を可能な限り維持しつつも、コスパで勝負できる多様な価格帯の商品を拡張することは、かえって品ぞろえの充実と店舗の大型化を可能にする。「100円死守戦略」にこだわる限り、業界2位セリアがダイソーをキャッチアップすることは難しいかもしれない。
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