行列ができているのに「待ち時間0分」 飲食店でファストパスは広がるのか週末に「へえ」な話(3/4 ページ)

» 2024年02月11日 08時45分 公開
[土肥義則ITmedia]

サービス開発のきっかけ

 導入事例をもうひとつ紹介しよう。東京の青梅市にあるラーメン店「Ramen Feel」だ。

 「ん? 青梅市って東京といっても、郊外だよね。立地を考えると、行列はそれほどできないのでは?」などと思われたかもしれないが、ラーメン大賞の新人賞を獲得するほどの人気店で、毎日のように多くの人が並んでいる。

 長い行列に対して、こちらの店も整理券を配ったり、記帳制で対応したり。多くの人を待たせるという課題があったが、それと同じくらい大きな問題があった。ラーメンが「売り切れ」になることである。

青梅市にあるラーメン店「Ramen Feel」(出典:Ramen FeelのInstagram

 Ramen Feelの店舗は、都市部から離れている。JR青梅駅から、さらに奥多摩方面に向かって2駅の日向和田駅から徒歩10分ほどのところにある。東京駅から青梅駅まで1時間30分ほどかかるので、都市部で働いている人が「ちょっとランチに」というわけにはいかない。一杯のラーメンを食べるのに2時間ほどかけても、売り切れになっていることがあるのだ。

 店側はこうした課題を抱えていたので、24年1月に有料予約サービスを導入した。手数料を1人390円に設定したところ、行列が緩和されたという。導入後、外国人観光客が増えているようで、「せっかく日本に来たんだから、ちょっとお金を払ってでも、行きたいところを効率よく回りたいよね」といったニーズにうまくハマったようだ。

 さて、テーブルチェック社は、なぜこのようなシステムを導入したのか。きっかけは、谷口優社長の消費者視点である。「人気店で食べたいけれど、行列ができていた。本当は並びたいけれど、時間がないのであきらめた。こうした経験を何度も積み重ねていく中で、『お金を追加で払ってでも人気店で食べたい』というニーズがあるのではないかと考え、システムの開発を進めました」という。

世界的に見て飲食店の価格が安い(出典:テーブルチェック)

 開発のきっかけは、もう1つある。飲食業界の課題だ。コストは高騰しているのに、それに見合った値上げができていない。最適な価格設定ができていない店が多い中で、コロナが「5類」に移行しても、客足は完全に戻っていない。こうした状況に対して、有料予約のサービスを導入すれば、収益面で貢献できるのではないかと考えたようだ。

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