リテール大革命

物流の根幹、「荷姿」を疑え仙石惠一の物流改革論(2/2 ページ)

» 2024年02月13日 14時41分 公開
[仙石惠一ITmedia]
前のページへ 1|2       

「一貫荷姿」を疑え

 皆さまは「一貫荷姿」という言葉は初めてお聞きになるのではないだろうか。一貫荷姿とは、前工程で作られた状態のまま変更なく、最終工程まで運ばれる荷姿のことを指す。

 長距離輸送を伴う物流でよく採用される、物流効率化のための発想である。この考え方を工場で当てはめると、協力サプライヤーの生産工程で作られた荷姿を途中で変更することなく自社の生産工程まで運んでくることになる。すると、物流の観点で見れば極めて望ましい「節なし物流」を実現できるのである。

「一貫荷姿」とは

 協力サプライヤーは自社の物流コスト、すなわち皆さまの会社の工場まで輸送するコストを考えると、容器にできるだけ多くの数量の部品を入れたいと考える。可能であれば容器を大型化し、可能な限り多くの数を入れたいとも考えるだろう。結果的に協力サプライヤーの物流コストが下がり、工場の調達コストが改善されることにもつながる。

 一方で、この荷姿を受け取ったユーザーの生産ラインは取り出しにくさや大型容器使用に伴う歩行発生で生産性に悪影響が生じる。では、ユーザーの生産ライン起点の発想で一貫荷姿を作ったらどうなるだろうか。

 すると、恐らくは容器の中がスカスカの、極めて充填(じゅうてん)率が低い荷姿になることだろう。これでは輸送効率を低下させ、物流コスト上昇につながることが目に見えている。ということで、多くの会社ではサプライヤー側とユーザー側のニーズの折衷案でできた一貫荷姿を採用している。ユーザーの生産ラインでもそこそこの使いやすさ、輸送においてもまあまあの積載効率となる荷姿である。

 これは、お互いロスを抱えたままの中途半端な荷姿である。もし、とことん物流改善するのであれば、このような中途半端な荷姿は作るべきではない。輸送には輸送に適した充填率重視の荷姿を、生産ラインには取り出しやすさを考慮した荷姿を作るべきである。

 つまり一貫荷姿という発想は一度疑ってみる必要がありそうだ。

【総力特集】「企業誘致〜未来の商機は地方にあり〜」実施中

著者プロフィール:仙石 惠一(せんごく・けいいち) 

photo

合同会社Kein物流改善研究所代表社員。物流改革請負人。ロジスティクス・コンサルタント。物流専門の社会保険労務士。

1982年大手自動車会社入社。生産管理、物流管理、購買管理を担当。物流Ierの経験を生かし荷主企業や物流企業の改善支援、各種セミナー、執筆活動を実施。

著書『みるみる効果が上がる!製造業の輸送改善 物流コストを30%削減』(日刊工業新聞社)『業界別 物流管理とSCMの実践(共著)』(ミネルバ書房)

その他連載多数。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

SaaS最新情報 by ITセレクトPR
あなたにおすすめの記事PR