さて、それを踏まえて今回の「職人軽視批判」をどう捉えるべきか。確かに、ワークマンは吉幾三さんのコマーシャルで知られたように「職人を顧客」にして、成長してきた事実がある。しかし、だからといって批判を真摯(しんし)に受け止めて、経営陣が急に「従来の客層拡大という目標に加えて、これまで支えてくれた職人も大事にすることを目標にしよう」とか言い出したらどうか。
社員が混乱することは間違いない。
これまで「客層拡大」という経営目標に向かって、「#ワークマン女子」などのイメージ戦略を続けてきた現場は根本的な見直しを求められる。アウトドアや日常生活での「機能性・低価格」なものづくりを愚直に進めてきた製品づくりも迷走を始める。
これまで「しない経営」でシンプルな目標に向かって働いていた社員たちは、すさまじいストレスにさらされる。「客層を拡大しながら職人にも支持されるにはどうすべきか」「ファミリーも職人も入りやすい店舗にするにはどうすべきか」などの課題が一気に増えてしまうからだ。「客層拡大しろとか言ったり、職人軽視するなとか言ってきたり、ブレブレなんだよ、もうやってられねーよ」なんて会社の愚痴をこぼす人も増えるはずだ。
つまり、「職人も重視」という方針は一見すると、原点回帰で顧客を大事にしているように見えるが、実際のところは、これまでワークマンを成長に導いてきた「しない経営」を根底から崩壊させてしまう「悪手」なのだ。
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