変革の財務経理

AIで「将来仕事がなくなるぞ」という脅しはもういらない 今伝えたい、建設的な経理のキャリアチェンジ「私の仕事は経理事務です」は通用しなくなる

» 2024年02月16日 08時00分 公開
[西田めぐみITmedia]

 AIの普及により「将来、事務仕事はなくなる」――そんな話を耳にする機会が増えた。「今日明日の話ではなし」と考える人も多いだろうが、ChatGPTの登場で一気に企業のAI導入が進んでいる現状を見れば、実は「そう遠い未来の話ではない」というのが現実的な見方だ。

 テクノロジーに仕事を奪われる、いわゆる技術的失業は今までも繰り返し議論されてきた。有名なところでは、2013年にオックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン博士が発表した論文「雇用の未来」がある。詳細は割愛するが、米国の雇用の47%は今後30年のうちに自動化により消滅することを説いた内容で、当時多くの人が衝撃を受けた。

※Carl Benedikt Frey and Michael A. Osborne「The Future of Employment(雇用の未来)」(原文)より

 AIの企業導入や活用はいまだ発展途上にあることも事実だが、DX推進による業務のデジタル化が進行中であることに変わりはない。中でも、影響が色濃いと考えられる職種は経理だ。

photo 経理がよくなる 経理革新プロジェクト 税理士の児玉尚彦氏

 ITmedia主催のオンラインイベント「デジタル戦略EXPO」に登壇した、経理がよくなる 代表であり税理士の児玉尚彦氏は「経理DXが進めば経理担当者の業務は大きく変化する」と強調し、続ける。

 「(経理DXでは)経理事務の作業をITやクラウドに移管して切り離すことが第一段階となる。経理には、デジタル化により効率を上げながら、アップスキルとリスキリングを取り入れることによってさらに上のステップを目指すタイミングが訪れている」

 児玉氏は、経理人材に求められるスキルレベルを「初級」「中級」「上級」の3つに整理する。経理事務をミスなくこなせる人材は初級レベルになり「さまざまな企業の経理部門を見ていると、だいたい全体の7割以上が該当する」(児玉氏)が、その多くが中級や上級へのステップアップに積極的ではないという。

 「多くの人は、自分で壁を作って(ステップアップをしない選択をして)いるように思う。しかし経理事務の自動化は今も加速しており、現在のルーチンワークの99%は5〜10年でテクノロジーによる処理に置き換わるだろう。経理の人は、早めに事務作業を切り離すことで中級や上級レベルを目指すことを検討してほしい」(児玉氏)

 今後求められる中級と上級レベルの経理業務は、以下の図の通りだ。中級レベルに達している経理人材は、児玉氏が見てきた企業全体の2割、上級レベルになると1割程度だという。

photo 図:経理人材に求められるスキルレベル(児玉氏の講演資料より)

 上級レベルの業務内容を見ると経営戦略に深く入り込む役割が求められているようだが、これについて児玉氏は「今まで、中級レベルのスキルを得ている経理人材は『できる』と言われてきた。しかし今は、為替レートや原価高騰によるコストなど数字の変動が激しく、経営計画で予算を組んでもその通りには進まない。多くの経営層は『変化を把握して“異常”にどう対応するかを検討し、軌道修正できる経理人材』を求めるようになっている」と説く。

 講演の中では、このような状況を踏まえた経理人材のステップアップ方法――ジョブ型やメンバーシップ型それぞれのキャリアコースの紹介や、「アナログ経理とデジタル経理」を比較した生産性と将来性などについても語られた。

 今、経理は「仕事を奪われる存在」ではなく「経営状態を把握した頼れる存在」に進化していると考える方が正しい。あらがいようのない変化を前に、経理人材としての価値をどう発揮していけばいいのか。児玉氏の講演では、そのヒントを得られるはずだ。ぜひ、以下より登録(無料)して、全講演内容を視聴してみてほしい。

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