変革の財務経理

ARR50億円超のBill One 「インボイス特需」後、次の一手は(1/2 ページ)

» 2024年02月05日 12時22分 公開
[斎藤健二ITmedia]

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 Sansanが提供する請求書受領サービス「Bill One」の成長が止まらない。2020年5月のサービス開始から約3年半で、ARR(年次経常収益)は59億円まで拡大した。「Next SaaS Media Primary」の調査によると、国内SaaS上場企業において、ARR100億円超えは8社、50億円超えは18社。Bill One単体で見ても、15位に付ける規模だ。

直近(23年11月)のBill One ARRは59.3億円に達した。半年後の24年5月には75億円以上のARRを目指す(Sansan決算説明資料より)
Sansanは全社で、国内SaaS上場企業のARRランキング2位に付けるが、そのうちのBill One事業だけでも15位前後の規模だ(「Next SaaS Media Primary」提供)

 その上、成長率が著しく高い。前年同期比で179.5%増加しており、この規模のサービスの成長率としては、他社の数倍以上となる。直近の成長率はさらに加速しており、1月12日に行った第2四半期決算では、24年5月末時点のARR目標を75億円以上に上方修正した。早晩国内SaaSのトップ10クラスに到達しそうな勢いだ。

 Bill Oneの強さはどこにあるのか。そして次の一手はどのように考えているのか。Bill One事業の責任者を務める大西勝也執行役員に聞いた。

Bill One事業の責任者を務める大西勝也執行役員

エンタープライズでのシェア17.2%までは早期に行きたい

 Bill One成長の背景にあったのは、23年10月にスタートしたインボイス制度だ。これまで自由なフォーマットでやりとりされていた請求書を、適格請求書(インボイス)と呼ばれる体裁にそろえて発行・保存が必要になった。相手先の適格事業者番号を確認しなくてはならず、税率の記載などもルールが定められた。

 インボイス制度は、ほぼ全ての事業者が影響を受ける一方、手作業で対応するには事務負担が大きい。Bill Oneと同時期に数多くスタートした請求書受領サービスは、このニーズに対応して拡大してきた。現在複数の請求書受領サービスがしのぎを削る中で、Bill Oneはトップシェアを誇る。他サービスに対する強みはどこにあるのか。

 「Bill Oneでは適格請求書の判定機能に注力した。これができるのはBill Oneのみ」だと、大西氏は機能面での強みを話す。名刺管理サービスSansanで培った高いデータ化精度を背景に、受け取った請求書が適格請求書かどうかを判断し、マークを付ける機能だ。

 さらに、当初名刺管理サービスのSansanと共有していた営業体制を、独立させたことも大きい。200人規模の直販体制を敷いたほか、リコーやSCSK、ドリーム・アーツなどと連携し、パートナーによるセールス体制も強化した。Bill Oneは、導入後に運用がしっかり根付くようサポートする、いわゆるカスタマーサクセスチームの顧客からの評価も高い。これが平均解約率(チャーンレート)が0.47%と極めて低く抑えられている要因だろう。

 顧客セグメント別では、Bill Oneは従業員1000人以上のエンタープライズ企業に強みを持つ。売り上げの内訳を見ると、中堅・中小も対前年約160%増と大きく成長しているが、エンタープライズの成長率は228%増。実に3.3倍に増加している。

 さらに伸びる余地は大きい。名刺管理サービスのSansanも大企業に強く、エンタープライズ企業内の利用率は17.2%まで達している。一方Bill Oneは現状3.8%にすぎない。現在、それぞれの導入先にクロスセルをかけてはいるが、重複して導入している企業は2割程度だ。この比率を上げていくだけでも、Bill Oneの潜在的導入企業数は4倍以上ある。大西氏は「エンタープライズ企業内シェア17.2%までは早期にいきたい」と意欲を見せた。

エンタープライズに強いSansanらしく、Bill Oneも大企業への導入が加速している。特定の会計システムにひも付かず、単体で導入できる点も大企業が導入する際の強みだ(Sansan決算説明資料より)
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