変革の財務経理

ARR50億円超のBill One 「インボイス特需」後、次の一手は(2/2 ページ)

» 2024年02月05日 12時22分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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「インボイス特需」一巡後の戦略は?

 とはいえ、23年10月スタートのインボイス制度に間に合わせるため、各企業が導入を急いだという背景もある。いわば業界全体で起きた「インボイス特需」だ。これが一巡した今、追い風は弱まっているのだろうか。

 「企業はインボイス制度には対応したものの、まだまだ半分以上の企業で紙が残っている」と大西氏。各企業は、まずインボイス制度自体への対応を進めてきた。しかし、同時に電子化を進めた企業と、紙のまま対応を行った企業がある。紙が残っている企業では、次にどう生産性を高めていくかのフェーズに入る。そこにBill Oneの大きな需要が埋まっているというのだ。

Bill Oneが持つ適格請求書の判定機能。特許も出願している

 インボイス制度や24年1月から本格的な対応が必要になった電子帳簿保存法など、法改正を背景に経理周りのDXが始まった。次は、法対応だけでなく深刻な人材不足に対応していくニーズが強い。

 特にBill Oneは「アナログの紙を置き換えていくところの信頼性、ノウハウには一日の長がある」(大西氏)。経理のDX化という大きな潮流を追い風に「現在と同じくらいの成長率は維持していきたい」と大西氏は話した。

次の展開

 ではBill Oneの次の展開はどうなるのか。大西氏が1つ目に挙げたのが営業力のさらなる強化だ。「例えば金融機関との連携」(大西氏)などを行い、体制を強化していく。

 2つ目がグローバル展開だ。タイに現地法人を設立する計画で、Bill Oneを展開していく。「まだまだタイは紙が多い。国としてはデジタルを推進している。日本に近い状態」(大西氏)

 3つ目が周辺領域に向けた機能拡充だ。会計領域や経費精算領域には手を出すつもりはないとしながらも、例えば発注データとの照合を楽にしていくなどの機能を構想している。また、23年春に提供を開始した法人カードも強化する。顧客からは、証憑(しょうひょう)とカード明細の照合の自動化機能などの評価が高いという。

 「基本的には全て月次決算加速につながるものを考えている。まだまだアナログな業務が残っていて、人手でなんとかしている業務を効率化していきたい」(大西氏)

 当初はSansanサービスとのシナジーが見えない、といった声もあったBill Oneだが、今やその成長は著しい。Sansan全社において、直近四半期の売上増21.1億円のうち、9.3億円がBill Oneによるものだ。全社の成長のけんいん役にまでなったBill Oneの今後の成長に注目したい。

筆者プロフィール:斎藤健二

金融・Fintechジャーナリスト。2000年よりWebメディア運営に従事し、アイティメディア社にて複数媒体の創刊編集長を務めたほか、ビジネスメディアやねとらぼなどの創刊に携わる。2023年に独立し、ネット証券やネット銀行、仮想通貨業界などのネット金融のほか、Fintech業界の取材を続けている。


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