OpenAIが開発、動画生成AI「Sora」の衝撃 エンタメコンテンツはどう変わる?(3/3 ページ)

» 2024年02月27日 07時00分 公開
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生成AIが生んだコンテンツ 2つの課題

 今後の課題のうち、一番大きなトピックは、やはり、著作権の問題です。

 「AI生成の画像やイラストは、既存の著作物を学習用データとして利用し、著作権を侵害しているのではないか?

 この問題は当初から議論されており、クリエイターや作家が所属する団体からも声明が出ています。美術著作権の啓蒙・擁護を行うための団体「日本美術著作権連合」は、23年8月に公式Webサイトで生成AIに関する声明を発表しました。

 声明の中では、生成AIは創作活動の優れた補助ツールとなり得ることを認めつつも、「生成AIに対し何らかの抑制もなく安易な利活用が進めば文化の発展に必要不可欠な創作活動を阻害する恐れもある」と指摘し、「クリエイター団体である日本美術著作権連合としても現時点における生成AIの推進について諸手を挙げて賛成することは出来ない」と表明しています。

 また、権利保護の具体的な方法として「学習対象にされることに対するオプトアウト」「データセットに関する透明性の確保」「AI生成物であることの表示」「学習や利用など各段階においてガイドラインを制定する」を提示しています。

 次に「AIで生成した画像やイラストに著作権があるのか?」という課題です。

 日本の法律では、AIが自動的に作ったコンテンツ生成物について、基本的には著作物性が認められず、著作権は発生しません。AIによる生成に人が関与し、その点に創作的寄与が認められるならば、出力された生成物は著作物であり、創作的寄与をした人が著作者ということになります。

 例えば、23年6月に集英社がAI生成画像を使ったグラビア写真集を発売しましたが、販売開始後1週間ほどで、販売を停止しました。本件はAIによって生成された画像をそのまま使用したのか、加工したかは分かりませんでしたが、格好の議論の的になってしまいました。

 このような懸念を踏まえて、今後、コンテンツの制作側は、学習対象にしたコンテンツを明示したり、AI生成物であることや、AI生成物を元に人が手を加えた創作物であることを明示するなどが求められてきます。

 既に発表されているコンテンツでも、例えば、前述したテレビアニメのエンディングテーマ曲のアニメリリックビデオに制作協力したAiHUBは、制作発表のリリースの中で、下記のように記載しています。

 「生成AIは、文化庁のガイドラインに則り、著作権に配慮したセキュア・モデルを構築し、キャラクターの最終アウトプットには、BEYBLADE Xの七色マルチの素材のみを使用しています」

生成AIでエンタメビジネスはどう変わるのか

 さまざまな課題はあるものの、生成AIを活用したコンテンツ制作は、クリエイターにも作業効率化や創作の補助という観点で多くのメリットがあり、個人的には徐々に普及していくと思っています。

 とはいえ、全ての工程を生成AIに任せるのではなく、一部の工程を生成AIに任せて、あくまで人が全体のクリエイティブ全体のハンドルを握りながら、制作するという形がしばらくは続くと考えます。

 その上で、生成AIが生み出したコンテンツや、それらの販売プラットフォームも徐々に整備されていくでしょう。誰でも簡単にクリエイターになる時代がやってくるともいえますし、それによってエンタメコンテンツ産業にどのような変化があるのかは未知数です。

 それでも、これから数年の間に生成AIが、エンタメビジネスに大きなインパクトを与えていくのは、確実です。しっかりと技術トレンドを追っていく必要があると思います。

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