そうなってくると、自分の家族から「あれが欲しい」「ここに行きたい」と言われても、お金と時間の両方がないため、かなえてあげられません。そして、自分や家族の幸せも実現できないのに、社員を幸せにすることなどムリだ……。と、どんどんすさんだ心になっていきます。
そんな経営者の多くは、「大事なのはお金(利益)じゃない。世のため人のためになることが大切なのだ」と考えてしまっているのです。
ここで断言しておきます。「値引き」は世のため人のためになることではありません。世のため、人のためになることには「価値」があり、価値の対価として価格があります。その価格を下げるというのは、世のため人のためになっていないと認めることになってしまうのです。
これは、もちろん戦略的な価格を持つなという意味とはまったく異なります。規模の原理やDX化の恩恵を受けて、価値をより展開するために、価格を下げるというのは戦略的には問題ありません。
間違いは、世のため人のためにと考え、値引きをし、自社の収益を下げ、従業員の給与を下げ、結果として会社の運営ができなくなるサイクルに入ることです。善意の値引きはビジネスではなくボランティアです。
もしボランティアで値引きするのであれば、「これはこれまでお世話になっている○○様に対してのボランティアで値引きをする。悪いが協力してくれ」と社員に伝えましょう。そのほうが誠実です。そのときの社員の顔を見て、今後その顧客企業との関係を考えましょう。
また、安易に値引きしてしまうのは、お客さまがあまり欲しくないものを、無理して売っている状態とも言えます。お客さまが本当に欲しいもの、ニーズをかなえるものなら値引きなどせず、高く売れるからです。
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