「大事なのはお金じゃない」 経営者が考えてはいけないこと高賃金化(1/3 ページ)

» 2024年02月24日 09時30分 公開
[田尻望ITmedia]

 経営者というものは、常に「付加価値生産性」を向上させ続けるための戦略を立て、成果の出る施策を実行し続けなければいけません。しかし、給与が上がらない会社の経営者の多くは、それができていません。それは、そもそも社長に「社員の給与を上げよう」という気がないということにほかなりません。

 経営者であるならば、まず「会社の収益をもっと高めて、社員の給与をもっと上げてあげたい」というマインドを持つべきです。そうした気持ちを持っていて、なおかつ、「顧客に対して高付加価値を提供する経営」の重要性がわかっている経営者の会社では、おそらく社員の給与は高く、毎年上がり続けているはずです。

給与がなかなか上がらない(出典:ゲッティイメージズ)

 一方で、「社員の給与をもっと上げてあげたい」という強い気持ちを持っていながら、それを実現できない経営者もいます。彼らの多くは、「社員を大切にしたい」「もっと待遇をよくしてあげたい」と言いながら、経営に対する考え方、やり方が間違っているのです。気持ちとしては、本気で社員やその家族を幸せにしたいと思って頑張っているのですが、「付加価値をつくり、それを社会と顧客に提供して利益を出すことこそが、経営の最重要課題である」ということがわかっていないために成果が出ないのです。付加価値を生み出して、それを確実にお客さまに提供すれば、きちんと利益が出て、その利益を社員に分配できます。

 それができない経営者には、ある共通の特徴があります。彼らの多くは、「お客さまに心を尽くしたサービスを提供して、喜んでもらいたい」と思うがゆえに、「値引き」を安易にしてしまうのです。これは経営において最悪と言うべき手法です。お客さまに心を尽くしたつもりで安易に値引きをしてしまうと、会社の業績にダイレクトに影響し、確実に利益(粗利)が落ちます。

 利益(粗利)が落ちたら、もちろん給与は上げられません。「1人1時間あたりの付加価値生産性」も下がるので、社員にも今まで以上に長時間働いてもらわないといけません。しかも、利益が減ってしまった分、経営者自身も長時間働かないといけなくなります。

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