SNSが捉えた能登半島地震 進化する「企業防災」の形とは企業が備えるBCP(2/4 ページ)

» 2024年02月28日 12時00分 公開
[米重克洋ITmedia]

マスメディアの弱体化を補うSNSの役割

 こうしたSNS上のビッグデータの活用は、企業や自治体・当局の防災・減災対策においても有効だ。事業継続の可否やサプライチェーンへの影響を判断する上では、やはり「具体的な被害状況」を「ピンポイントで把握する」ことが先決である。

 特に発災直後は、現地からの連絡や報告に頼るのも難しい。現地のスタッフが報告したくても、そもそも通信や電力のインフラが機能停止していることもある。そうしたリスクに対処するために、膨大な公開情報の塊であるSNSなどのビッグデータを活用した情報収集手段を確保しておくことは、企業にとっても防災対策の「一丁目一番地」になりつつあるのだ。

1月1〜5日にFASTALERTが検知した能登半島地震関連の被害情報地点を地図上にピンポイントで表したもの(JX通信社提供)

 加えて、近年はマスメディアの体力が弱っている点にも留意が必要だ。新聞社をはじめとした報道機関を取り巻く経営環境は厳しい。その結果、地方では支局などの取材拠点が急速に減少している。石川県でも、能登半島地震の直前に大手新聞社が輪島市から支局を撤退させていた事例があった。こうした報道機関の取材ネットワークの縮小が、災害被害を迅速・正確に知る上でネックになることは想像に難くない。

 特に、能登半島のように交通インフラが元々脆弱な地域にあっては、外から記者が取材に入るにしても一苦労だ。交通障害に巻き込まれたり、二次災害のリスクに直面して迅速に現地入りできないこともある。

 従来は、発災直後の重要な情報手段はテレビだったが、テレビ局にしても現地で直接取材した情報が入るまで、数時間から半日以上、地元の定点カメラの映像やSNSに投稿された「視聴者提供」の映像(実はこうした情報はほとんどが冒頭のFASTALERTで収集されている)を流しながら、役場や地元の住民と電話をつないで話を聞く、といったオペレーションにならざるを得ない。

 最も情報が必要な発災直後の段階で、写真や動画を含めて、状況をリアルタイムかつ具体的に把握できるSNSの役割は大きいのだ。この情報可視化のパワーこそ、SNSという情報空間が私たちにもたらした「光と影」の光に当たる。

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