セブンはなぜ「紅茶マシン」を試してる? お店に行って分かった“大きすぎる”可能性長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/5 ページ)

» 2024年02月29日 10時15分 公開
[長浜淳之介ITmedia]
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失敗もあったカフェ戦略

 セブンのカフェ戦略は成功し続けているように見えてしまうが、歴史的に見ると、そうでもない。

 カウンターコーヒーには、1980年代から取り組んでいる。最初はサイフォンで作ったコーヒーを注文のたびに店員がカップに注いで提供していた。しかし、繁忙時に店員の手が回らないなどの理由で失敗。ドリップ方式、カートリッジ方式にも取り組んだが、いずれも失敗した。

 完全セルフ、簡便なワンタッチ操作にしたセブンカフェの登場まで、30年も諦めずに取り組んだ。そこに創業者・鈴木敏文氏の執念を感じざるを得ない。

 14年には、セルフコーヒーがヒットした余勢を駆って、コーヒーに相性の良い商品としてドーナツをレジ横で本格展開。「ミスタードーナツ」と「クリスピー・クリーム・ドーナツ」の経営不振を招くほど追い詰めたが、店内調理を重視する専門店の鮮度に最終的には敵わず、数年でレジ横から撤退している。

かつてレジ横で展開していたセブンカフェのドーナツ(出所:セブン-イレブン・ジャパン 公式Webサイト)
2018年11月当時のレジ横ドーナツ(出所:セブン-イレブン・ジャパン 公式Webサイト)

 また、18年には都内の数店でテスト的に実施していた、ビールサーバーによる樽生ビールの提供を中止。現在まで復活していない。「ちょい生」なる呼称で、SとMの2サイズ。Sが100円、Mが190円という、格安居酒屋を上回る価格破壊で、長蛇の行列を生み出した。しかし、反響が大きすぎて、他の業務に支障があるため、止む無く中止に追い込まれたと言われている。

 本当にちょい生の全国展開を実行していたら、セブンが今頃は間違いなく日本一の居酒屋、あるいは超巨大ビアカフェチェーンになっていたほどの非常にもったいない企画だった。子どもも来るようなコンビニが酔っ払いの巣窟になっていいのかと、苦情が入れば検討せざるを得なかったのだろう。コンビニ居酒屋化の断念は、それだけコンビニが国民の生活になくてはならない、インフラになった証でもある。

 紅茶マシンも、本当に成功するのかは未知数である。しかし、今後は、日本人も朝やランチ後のコーヒー、昼下がりの紅茶と、飲み分けが進んでいく方向性も見えている。スイーツの強化と共に、アフタヌーン・ティーを楽しむ「ヌン活」需要開拓に、全国展開がなされていくのではないだろうか。

紅茶に合いそうな、まるっと苺のカップミルフィーユ(出所:セブン-イレブン・ジャパン 公式Webサイト)
大ヒット、お店で揚げたカレーパン(出所:セブン-イレブン・ジャパン 公式Webサイト)
セブン-イレブンが力を入れる、お店で作るスムージー(出所:セブン-イレブン・ジャパン 公式Webサイト)
セブン-イレブン、お店で作るスムージーの食品ロスを削減する仕組み(出所:セブン-イレブン・ジャパン 公式Webサイト)

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。


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