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花王×アース製薬、虫ケア商品でタッグ 競合なのになぜ? 両社長が狙いを語る

» 2024年02月29日 18時30分 公開
[濱川太一ITmedia]

 花王とアース製薬は2月29日、虫ケア(蚊)の領域で協業を始めたと発表した。花王が独自開発した「蚊の飛行を妨げる技術」を応用し、蚊を駆除するスプレー商品を共同で商品化。蚊が媒介するデング熱の感染が増えるタイで、7月から販売する。

 互いに日用品や虫ケア商品を扱い、競合する両社。どんな経緯でタッグを組むことになったのか。

花王の長谷部佳宏社長(右)とアース製薬の川端克宜社長。両社がタッグを組んだいきさつとは――。

 両社が共同で開発したのは、化学合成剤不使用の殺虫スプレー「アース モスシューター」。花王が開発した、蚊の羽や体表面を濡らして飛行を妨げる新技術を応用し、タイでの現地調査などを経て、約半年かけて商品化した。

花王とアース製薬が共同開発した「アース モスシューター」

花王×アース製薬 協業のメリットは?

 協業の経緯について、花王の長谷部佳宏社長は会見で次のように振り返る。

 花王が新技術を発表したのは2023年6月。発表後の懇親の場で、アース製薬の川端克宜社長から「非常に面白い技術。アース製薬としても注目している」との言葉をもらった。

 虫ケアのリーディングカンパニーが興味を持ってくれたのは、われわれとして千載一遇のチャンス。話しかけたところ、川端社長から「一緒にやりましょう」と言ってもらった。

 花王としては、新技術を商品化し、一般家庭に普及させるまでのプロセスを全て自社だけで進めていては時間がかかる。アース製薬が持つ販売網や商品の展開力に頼りたいところだった。

 アース製薬としても、花王との協業はメリットが大きい。アース製薬は1980年にタイに現地法人を設立し、商品の開発、生産、販売、物流まで一手に担っている。タイの虫ケア市場で2位(約17%)のシェアを持つアース製薬は、花王の新技術を生かした商品を合同で展開することで、同国でのシェア1位に近付くことができる。

細かいミストで蚊を落下させ駆除する。デモンストレーションの様子

 こうして双方の思惑が一致。花王が新技術を発表した約1カ月後の7月20日に両社は協業プロジェクトを正式に立ち上げた。1969年の同日にアポロ11号が月面着陸したことにちなみ、プロジェクト名を「アポロ」と命名。「これまでできなかったことを可能にする象徴的なネーミング」(長谷部社長)として、商品開発を進めてきた。

 アース製薬の川端社長は会見で次のように話した。

 同業の中で、プラットフォーム化できることは他にもたくさんあるのではないか。海外で市場を拡大していく上で、同じ虫ケア商品をばらばらで展開するよりは、一緒にやった方がいいこともある。今後も継続して話を進めていきたい。

 両社は今後、日本も含めた販売エリアの拡大も検討するという。アース製薬は2025年にタイの虫ケア市場でのシェア1位を目指す。

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