DeNA「276億円減損」で赤字 “膿出し”は成功するのか古田拓也「今さら聞けないお金とビジネス」(2/2 ページ)

» 2024年03月01日 07時00分 公開
[古田拓也ITmedia]
前のページへ 1|2       

元凶は四半期決算?

 このように、中長期的な戦略でもある「減損」や「貸倒引当金の積み増し」という事柄で短期的な株価が乱高下することは、経営者にとって面倒な側面もある。

 四半期決算は、投資家と経営者双方により短期的な視点を強いることにつながるデメリットが指摘されている。

 四半期ごとの業績報告は市場の過剰反応を招き、株価の不安定化を引き起こすだけでなく、企業の長期的な成長戦略や研究開発投資をおろそかにしてしまい、長期的な業績にとってもマイナスであるとの批判もある。投資家や経営者が四半期ごとの数字に振り回され、本来重視すべき持続可能な成長や企業価値の向上に必要な戦略的決断を後回しにするため、四半期決算に批判的な立場の意見も少なくないのだ。

 そんな「アンチ四半期報告」の立場からは、より長期的な視点で企業の健全性を評価する決算方法も提案されている。例えば、半期ないし、年次決算をベースにすることで短期的な業績変動に一喜一憂することなく、経営の質と企業価値の本質的な向上に注目することを目的としている。

 四半期決算報告の弊害ともいえる事象として「アイスクリームを取り扱う企業の株式を冬のうちに買っておき、業績が好調になる夏に売る」といった投資手法が挙げられるだろう。

 そもそも、投資家が長期的な視点に立っていれば、同一決算期において季節性に依存した超過利潤は生じ得ない。しかし、四半期決算によって、業績が見た目上は大きく悪化する冬季に株価が必要以上に下落し、業績が見た目上拡大する夏季に株価が必要以上に上がるという動きが、上記のような投資手法を有効にしてしまう。

photo

 DeNAの巨額減損が、中長期的な観点で必要な「膿み出し」のフェーズであるとするならば、業績低迷という「症状」は快方に向かう可能性がある。出した膿をみて「もう治らない」と判断するのは早計かもしれない。

 減損処理を通じて、企業は資産の価値を現在の市場価値に即して再評価し、不採算事業からの撤退や資源の再配分を行う。これにより、経営の健全化と将来の成長を目指せるだけでなく、投資家にとっても透明性の高い経営判断で、どちらかといえばむしろ企業価値の向上に寄与する可能性があると言えるだろう。

筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCEO

1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CEOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Twitterはこちら


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.