マーケティング・シンカ論

ゲームのローカライズ対応 「おせっかい」とは言い切れない、これだけの理由エンタメ×ビジネスを科学する(2/2 ページ)

» 2024年03月06日 08時00分 公開
[滑健作ITmedia]
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時代とともに変化する、ローカライズの社会的要請

 ゲームにおけるローカライズは価値観の変化や技術の進歩により、対応を求められる領域が広がっている。

 例えばアクセシビリティである。身体的な制約を持つプレーヤーにも配慮した設計が求められ、字幕の大きさや使われる色の調整、両手が使えないプレーヤー向けの操作性カスタマイズ、音声読み上げ機能など、アクセシビリティを考慮した対応が必要になってきている。

 背景には米国のCVAA法律がある。これはコミュニケーションに関わるハード・ソフトは障がいを持つ人でも使用可能なものとすることを定めた法である。2018年まではゲームへの適用を猶予されていたが、19年以降はこの法に対応したものである必要がある。ゲームビジネスにおいて米国市場は大きな影響を持つため、グローバル展開を目指すゲームを開発する際は、必然的にこのアクセシビリティ対応が必要だ。

 オンラインプラットフォームを通じたデジタル配信が主流となり、全世界同時リリース/バージョンアップが前提となったことも、ローカライズにおける変化といえる。かつては日本語版を最初に発売し、ローカライズを行った米国版・インターナショナル版と同じタイトルの異なるバージョンを順に投入するケースも多く見られた。ただ世界同時配信が主流になった昨今、ローカライズはより迅速に、また効率的に行われる必要が生じている。

 エンターテイメントのローカライズで定期的に話題となるのが文化・風習に関連した表現方法の対応であり、特にポリティカルコレクトネスへの対応についてメーカー側には難しい調整が求められており、ゲームも同様である。なおSNSなどで話題になり、より多くの人の目に触れ、その結果大きな論争を呼ぶこともある。

 事例としてはキャラクターの名前や服装、キャラクターが持つ小物など、法的には定められていないものの文化・思想的に避けたほうがよい表現の修正など、先に例示したように昔から存在している(後編に続く)。

著者プロフィール:滑 健作(なめら けんさく) 

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 株式会社野村総合研究所にて情報通信産業・サービス産業・コンテンツ産業を対象とした事業戦略・マーケティング戦略立案および実行支援に従事。

 またプロスポーツ・漫画・アニメ・ゲーム・映画など各種エンターテイメント産業に関する講演実績を持つ。

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