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「未経験からIT人材へ」社内のリスキリングで実現 パーソルの「6カ月は働かない」育成法の中身(3/3 ページ)

» 2024年03月13日 12時00分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]
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現場のスピード感について行けず、戸惑う場面も

 同社では、第1期の成功を受け、続く第2期では、セキュリティ、ITマネジメント、DXと3つのリスキリングコースを設けた。そこでは17人の応募があり、面接を実施した上で13人に絞り込み実施した。ちなみに、ITマネジメントの受講者のうち2人は、ワーキングマザーだそうだ。

 ただ、第1期の反省点を踏まえ第2期はプロセスを変更した。

 「配属を受け入れる側から、OJTが負担になったという声が出ました。そこで、最初の3カ月の座学と資格取得はそのままに、その後は直ちに現場でOJTを行うのではなく、次の3カ月は、配属先から委託された疑似的な業務を通じて実務的なトレーニングを行う期間に改めました」(内田氏)

photo 2023年度のプログラムの実施スケジュール(パーソルホールディングス提供)

 このプロセスの変更措置は、受講者からの意見を踏まえたものでもある。新谷氏が上記で「課題と学びの内容が結び付かない」と述べたことを思い出してほしい。

 「私の場合、3カ月の座学の後、資格を取得した直後に配属されました。OJTとはいえ、学んだスキルが、どのような場面でどう生きるか分からないまま現場業務に就いたので、実務のスピード感について行けず、戸惑う場面もありました。

 配属先の部署でも、最初は私のスキルレベルについてどのように判断すればいいのか迷いがあったようです。配属前に実戦的なトレーニングを実施するのは有効だと思います」(新谷氏)

 24年10月から始まる第3期のリスキリングプログラムでは、座学に入る前に自主学習的な準備期間を設けるという。精力的に学び知識を吸収するクセを付けた上で、本格的なリスキリングプログラムに向き合ってもらうためだ。

脱落者が出た場合、会社はどのように対処するのか

 今後のリスキリング戦略については、コースを増やすことと、学ぶ人数を増やすことを考えているという。現状は、セキュリティやITマネジメントといった、高度ではあるが1点集中型の専門人材を育成するためのプログラムだが、今後について内田氏は次のような構想を語る。

 「現場業務を熟知しつつも、デジタルの知識やスキルも兼ね備えるといった人材を育成する仕組みを考えています。各人材のスキルの見える化にもつながり、デジタル人材を欲する各事業会社としても、複数の専門人材を掛け合わせる形での採用が行いやすくなります」(内田氏)

 インタビューの最後に、ちょっと意地悪な質問をしてみた。手を挙げた希望者を面談で選別した上でリスキリングしているとはいえ、脱落者や資格不合格者が出た場合は会社としてどのように対処するのであろうか。

 「面接では、新たな領域にチャレンジする意欲があるかどうかを判断します。今の職種が自分に合わないから、といった後ろ向きな動機の人はご遠慮いただきます。

 実績としては、第1期、第2期の20人全員が資格を取得しました。受講者同士が協力し、切磋琢磨しながら学ぶ体制が整っていますし、適切なコーチングを受けることができます。また、受講者には会社が投資してくれるという意識があるので、今後も、脱落者が出るとは考えていません」(内田氏)

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