大企業から中堅中小企業に至るまで、デジタルシフトやDXの推進が急務となっている。しかし、優秀なデジタル人材は慢性的に不足しており、人材確保に苦労する企業は多い。
求めるスキルを持つ人材の採用が難しいのなら、社内人材を育成しよう──こうした考えもあり、リスキリングに注目が集まっている。日本政府が5年で1兆円の公的支援を行うなど、官民を挙げてリスキリングの大合唱だ。
とはいえ、リスキリングは単なる「学び直し」ではなく、「新たな価値を創出し続けるために必要なスキルを学ぶこと」に他ならない。その方法論に正解はなく、多くの企業が自社への最適解を求めて手探りで取り組みを進めているのが実情だろう。
人材サービス関連の事業会社を統括するパーソルホールディングスでは、グループ各社から経験を問わずテクノロジー人材を募集している。6カ月間のリスキリングプログラム後には、獲得したスキルを生かせる部署に配置転換する。
6カ月のプログラムで、テクノロジー人材として十分な働きができるようになるのか。また、それまでの業務を外れ、半年後にはIT人材として異動するという思い切った施策を打てたのはなぜなのか。企画を推進した内田明徳氏(グループテクノロジー推進本部 本部長)と、第1期リスキリングプログラムの参加者でセキュリティ関係の部署にグループ内転職した新谷大輔氏(グループIT本部 情報セキュリティ部 ITセキュリティマネジメント室)に話を聞いた。
パーソルホールディングスは中期経営計画において、2026年までにテクノロジー人材を2000人に増やすという目標を掲げている。同社もご多分に漏れず人材の確保に苦労しており、中途採用に加えて、社内育成による人材拡充の強化に乗り出した。リスキリングおよびアップスキリングにより年間100人規模のテクノロジー人材を育成しており、その一環として打ち出したのが前述の「未経験テクノロジー人材育成プログラム」だ。
参加者は6カ月のプログラムで学び、必要な資格を取得し、OJTを実施した上でグループ内の該当する職場へと異動する。22年10月から23年3月に実施された第1期プログラムは、セキュリティ分野の専門人材の育成に的を絞っての実施だった。
「グループ各社の中途採用の状況から、デジタル人材のなかでもセキュリティ領域の獲得に苦労していることが分かりました。そこで、第1期はセキュリティの専門人材のリスキリングを実施しました」(内田氏)
グループ企業144社の人材戦略を横断的に包括する形で、持株会社がCoE(センターオブエクセレンス)方式で実施している。今回のリスキリングプログラムもCoEでの実施だ。また、リスキリングに限らず、CoEは通常の中途採用においても「グループ各社のデジタル体制の不均衡を防止する」(内田氏)目的で3年前に導入したという。
内田氏はデジタル人材について、社内の人材育成だけではなく、中途採用と併用することが重要だと話す。
「人材戦略を語る上で、中途採用とリスキリングは車の両輪です。デジタル系の人材については、高度な専門性を持つ実務経験者の中途採用は必須です。しかし、そのような人が当社のビジネスモデルや現場の業務を理解するには時間が必要です。
その一方でリスキリング人材は、現場を経験しています。両者がそれぞれの特徴を生かしながら、企業としてのパフォーマンスを最大化する必要があります」(内田氏)
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