CDラジカセに搭載する機能、デザイン、価格などが決まった。「〇〇台売れれば、〇〇万円の利益が出る」という計算をしているわけだが、開発の途中で金谷さんは「待った」をかけた。なぜそのような行動をとったのかというと、「2つの機能を追加したい」と考えたからだ。
1つはリモコン。本体のボタンを操作すれば、音楽は流れるし、録音などもできる。リモコンがなくても問題はないが、開発メンバーも「いまの時代を考えればあったほうがいいよね」と判断して、追加することに。
もう1つはアンチショックメモリー。この機能を搭載していれば、移動中でも音楽が中断されずに流れてくる。再生ボタンを押すと、CDがぐるぐると回り始めて、曲が始まる。しかし、しばらくすると止まってしまう。「あれ、故障かな?」と思う人も多いかもしれないが、それでも音楽は鳴り続ける。しばらくすると、CDがまた動き始める。
この動きが繰り返されるわけだが、簡単に説明すると次の通りである。音楽データを先読みしてメモリーに蓄える→読み込みが終わればCDの回転が止まる→メモリーに余裕が生まれれば、音楽データを先読みするために再び動き始める、といった仕組みである。
なぜこのような機能を搭載したのか。「当時のCMを見ると、米国の西海岸沿いを歩いているシーンがありました。歩行者はラジカセを肩に担いでいたんですよね。学生のころ、この姿に憧れまして。アンチショックメモリーを搭載しなければ、持ち歩くと音が飛ぶかもしれません。そうなってはいけないので、機能を追加してもらいました」
取材時、金谷さんは気持ちが“熱く”なったようで、CDラジカセをかつぎながら話をしてくれた。もちろん音楽を流しながらである。商品に対する愛情は、よーく伝わった。しかし、問題はお金の話である。価格は決めたのに、後出しジャンケンのように機能を追加すると、どうしてもコストが膨らんでしまう。
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