シャープの「ドライヤー」が好調 存在感がなかったのに、なぜ?前年比2倍のペース(4/4 ページ)

» 2024年03月22日 05時30分 公開
[小林香織ITmedia]
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美容家電市場で戦うハードルは

 新製品のアプローチにおいて、同社が現状注力しているのは「プラズマクラスターが髪にも良い」と伝えていくこと。空気清浄機などに使われている「除菌・消臭」効果への認知は取れているものの、「髪にも良い」という事実を知る人は少ないためだ。

 マーケティングでは俳優・シンガーソングライターの宮世琉弥(みやせ・りゅうび)さんをアンバサダーに起用して、若年層にもアプローチを図る。また、3月に実施されたファッションイベント「札幌コレクション」や「マイナビ 東京ガールズコレクション」に協賛し、ファッションや美容への興味が強い層へもPRした。

 「プラズマクラスターの効果を地道に伝えながら、よりユーザーが身近に感じられるようなプロモーションを行っています。デジタルで静止画広告を一方的に発信するより、モデルの方やユーザーのSNS投稿で共感を誘ったり、屋外に大きな広告を出したり。ユーザーみずからが共感をアピールしたくなるような仕掛けを、今後も検討しています」

しばらくはハイエンドの製品を中心に売上を伸ばしていきたい方針だ(シャープ提供)

 長い目でシェアを伸ばすには「ラインアップの拡充が選択肢になる」としながらも、慎重な考えを示した。

 「新ブランドとして価値を高めるにあたり、闇雲にラインアップを広げてしまうと、場合によってはブランド価値を毀損しかねません。しばらくはハイエンドを中心に、より広い年齢層や性別にアプローチして成長を目指す方針になりそうです」

 25年には美容家電市場での売上高5倍(22年度比)を目標に掲げる。ドライヤー以外のカテゴリーにも製品群を広げて、高みを目指したいという。

 「一番の難しさは、美容家電市場のトレンドの移り変わりの速さです。ヘアケア家電や家庭用脱毛器など安定成長しているモノもあれば、ブームが過ぎれば売れなくなるモノもある。安定成長しているカテゴリーで勝負する、あるいは成長が見込めるカテゴリーを慎重に見極めるのどちらかで参入を考えています」

 美容家電市場は、コロナ禍の「おうち美容」需要などにより市場が拡大、今後も伸びが期待されている。同市場で存在感のあるパナソニックやヤーマン、ReFa(リファ)などを展開するMTGなどの美容家電も売り上げは好調のようだ。シャープが競合と戦うには、新型ドライヤーのように「尖った要素」と「確かな機能性」が求められそうだ。

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