もし今回のケースを訴えれば、同じようなことが起こるだろう。動画投稿者のX(旧Twitter)によれば、虫の混入を発見した人は、はごろもフーズの担当者の対応に不満を感じていたようだ。しかも、やりとりを全て録音しているという。
信用毀損罪や業務妨害罪で高額訴訟となれば当然、撮影した側はそのような虚偽の風説を流す意図や、はごろもフーズの信用を貶(おとし)めようとする意図などなかったと反論するだろう。
では、なぜ動画を投稿させてしまったのかと問われたらどうするか。筆者が弁護士ならば、「はごろもフーズ側の対応に誠意を感じられず不信感を抱いたから」というストーリーで戦うだろう。そして、証拠として録音した担当者とのやりとりを裁判所に提出する。弁護士によっては記者会見などを開いて、はごろもフーズ側の対応にかなり不満があって、それがあのような動画投稿につながったとして、虚偽の風説や信用毀損の意図はなかったと強く主張していくだろう。
「あの動画を投稿したのは、事実なのに責任逃れで見苦しい」と思う人もいるかもしれない。しかし、裁判というのはそういうものだ。自分が正しいことをしたと信じる人は訴えられてあっさり「私が悪うございました」とはならない。死に物狂いで抵抗して、相手の主張を覆していく。
だから、このようなケースでの訴訟はあまりおすすめしない。特許や契約などに関する争いなど絶対に裁判で白黒をつけなくてはいけないこともあるが、少年がしょうゆ差しをなめたとか、虫混入の動画を投稿したとかの裁判は、よほどのケースでなければ企業にはデメリットのほうが多い。
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