リテール大革命

トライアル、Amazonも開発 スマートショッピングカートがもたらす、真の顧客価値とは?がっかりしないDX 小売業の新時代(3/3 ページ)

» 2024年03月29日 07時00分 公開
[郡司昇ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

買い物の体験価値をアップデートした「Caper Cart3」

 店舗でのピックアップやデリバリーの代行業者として知られる米国のInstacart(インスタカート)という企業があります。同社は21年にCaper AIという、リアル店舗の会計を自動化する技術を開発するスタートアップ企業を約500億円で買収しました。

 筆者はCaper AIが開発したAIレジカートの新バージョンを23年9月に体験してきました。最初に導入されたのはCaper AIがある米ニューヨーク州マンハッタンから南西に位置するニュージャージー州のスーパーマーケット、ShopRite Spotswood店です。

AIレジカート「Caper Cart3」(23年9月、筆者撮影)

 「Caper Cart3」はAmazon Dash Cartと同様に、スムーズな買い物体験を提供する仕組みです。Caper Cart3では、カート四方に設置されたカメラと重量センサーにより、商品のバーコードや重量をチェックし、来店客はスキャンを意識せずに買い物ができます。

 Caper Cart3とAmazon Dash Cartの大きな違いは、Caper Cart3では画像認識機能がなく、バーコードが読み取れない場合に、撮影された画像と同時にエラーが表示される点です。また、決済作業をセルフレジ端末で行う必要があります。レジでの決済については、タブレットの会計ボタンを押した後にタブレット上に表示されるバーコードをセルフレジでスキャンするだけです。筆者はVISA Touch決済を選んだので、数秒で決済が完了しました。

 また、Caper Cart3は非会員でも使用でき、利用のハードルを下げています。

 Caper Cart3の特徴的な要素として、特定の購入額に達するとルーレットが回り、購入意欲を高める仕組みがあります。会員カードをスキャンした買い物で35ドルを超えると割引などのインセンティブを得ることができます。筆者が35ドルを超えて購入した際には、5ドルの割引が当たりました。このような体験は、カートをさらに活用しようと思わせる非常に魅力的な仕組みだと感じました。

 日本のアプリなどでも決済後に抽選が行われる一見似たような取り組みは見受けられますが、決済作業後ではなく、店舗での買い物中、商品を購入した瞬間にタブレット上でルーレットが回るという体験は新鮮でした。買い物をしている最中に楽しいイベントが生じることで、さらに会員カードの作成や専用カートを使用することに魅力を感じると思います。

 例に挙げたタブレットカートは、レジ担当者を減らそうという単なる効率化を追求するデジタル導入よりも、買い物そのものの楽しさや体験価値の変革に重点を置いたDXです。

 大きな投資のかかる取り組みであるため、簡単に普及する可能性は低いですが、あるべき姿の一つと考えます。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.