そこでもう一つ大切な取り組みとなるのが、一度退職した社員が戻ってきたくなるような関係性の構築です。人口減少が進み今後も構造的に採用難が続くことが予測される中、これまでのように雇用の切れ目が縁の切れ目になるような関係性ではなく、一度生じたつながりを大切な資産と捉えることの重要性が認識されるようになってきました。
退職後も良い関係性を築いておけば、「成長したいまの自分なら、前職でこれまで以上の成果を出せるかもしれない」と考える社員が自社に戻り、再び戦力として活躍してくれることを選ぶ可能性を高められます。いわゆる、カムバックとかアルムナイなどと呼ばれる制度です。
また、一度自社の選考を受けたもののご縁がなかった求職者であっても、その後実績を積んで採用水準を超える人材へと成長し、中途採用で再チャレンジしてくれることだってあり得ます。
冒頭で紹介した住友商事の記事については、学生が面接官を評価する制度に対する賛否両論が聞かれました。しかし、会社が求職者を一方的に選ぶと捉えられがちだったこれまでの力関係を見直すという意味では、一定の効果が期待できます。
面接官が印象を損なうことのないよう配慮するのはもちろん、「どうしたら学生が選びたくなるか」という観点から自社の事業内容や企業風土について説明し、質問に回答できるスキルを身につければ、面接は単に合否を出すための場ではなく、大切な資産の種となる、新たなつながりを生む場へと変わっていくことになります。
会社の人事担当者は、これらの環境変化を踏まえ、採用後も退職後も、採用前も良い関係性を構築し続ける「つながり資産」を継続的に確保することが重要な役割になっています。
会社が置かれている状況を読み違え、自ら一方的に選ぶ側であるかのような勘違いをしてしまうと、面接官が横柄な態度をとったり、退職した社員を裏切り者呼ばわりしてしまうことになります。選ぶ者と選ばれる者の関係性を見誤ったまま修正できない会社は、今後、時代からどんどん取り残されていくことになるのではないでしょうか。
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