3つの理由でEV撤退したアップル “急ハンドル”で注力する「新たなビジネス」は何か(1/4 ページ)

» 2024年03月30日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]

 米アップルが電気自動車(EV)の開発を中止するというニュースが流れ、自動車業界およびIT業界に大きな影響を及ぼすものとして注目を集めています。「次世代自動車開発」という、一大有望マーケットへの進出断念に至ったアップルの真意はどこにあるのでしょうか。その影響も含めて探ってみましょう。

EV開発を中止したとされるアップル(出所:ゲッティイメージズ)

 アップルがEV開発について自ら公表したことは一度もありませんが、名うての“アップルウォッチャー”であるブルームバーグの報道を中心として、2014年にアップルが自動運転を研究していることが報じられ、15年には「タイタン」のコードネームでEV開発がスタートしていると明かされました。

 その後、19年に同分野の米スタートアップ企業を買収すること、21年には韓国の現代自動車などへの生産委託に関する協議を開始したことなども報道で明らかになっていました。それが今年の1月に急展開。当初25年の予定とされていた「アップルカー」の発売が28年以降に延期されたと報じられ、さらに今般の開発中止報道に至ったのです。

 アップルのEV開発撤退に関しては、大きく3つの理由があると思われます。「全自動運転開発上の問題」「EVを巡る環境の変化」「アップルの主要事業戦略の変更」です。一つひとつ、順を追って説明していきます。

アップルが目指した「自動車のスマホ化」

 まず、全自動運転開発上の問題についてです。アップルのEV開発は当初から、運転を完全自動化する「レベル4」技術の搭載を大前提として進めていたとされています。

 そもそもアップルは、自動車メーカーではなく、IT企業です。そのため、自社の特性を生かしたEV開発は「全自動運転下で、いかに快適なドライブ空間を作り出すか」といった視点のモノづくりになるのが必然なのです。

 アップルの「自動車のスマホ化」とも呼ぶべきEV開発は、自動車メーカー各社に、単に電気で走る自動車の開発にとどまらない流れを生んできました。すなわち、自動運転化を視野に入れた車内空間のエンタメ化やシアター化などの研究・開発です。

 ところが22年ごろから、自動運転を巡る開発環境に少しずつ変化が現れました。具体的には、自動運転への消極化です。

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