新幹線車内整備「18分」 時間との戦い 乗客の快適な旅を支える「ブルーのユニホーム」(1/3 ページ)

» 2024年04月09日 14時37分 公開
[産経新聞]
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 新大阪駅の20番ホームに滑り込んできた鹿児島中央発の「さくら」。折り返しで再び、九州へ向かうまでの時間は24分間。このわずかな時間内で座席やトイレ、ごみ箱などを整備するのがJR東海のグループ会社「関西新幹線サービック」(大阪市淀川区)のスタッフだ。

プロの技術光る

 まさに時間との闘い。新大阪駅の折り返し列車を担当する新大阪第二事業所チーフスタッフのM野雅隆さん(40)は、すべての乗客の降車が確認されると、きびきびとした動作でデッキに入った。整備終了までの時間は18分だ。

photo 座席のヘッドレストのシーツを交換するM野雅隆さん。折り返すまでのわずかな時間で車内を整備する=大阪市淀川区のJR新大阪駅(渡辺恭晃撮影)

 最初にごみ箱を片付けると、車内へ。座席に残されたごみを取り除き、20列ある座席の方向を転換していく。ここまでで約5分。続いて、しわの目立つヘッドレストのシーツを交換。車両の形式によって形状が違うため、準備には注意が必要となる。車両の端から交換忘れがないか、指さし確認。ほうきとちり取りで掃き掃除をしながら、車内をもう1往復。整備を始めて約10分が経過した。

 座席の持ち手、汚れた窓を拭く。そして、まもなく16分を迎えるところで整備終了。乗客がぴかぴかの車内に乗り込んだのは、到着してドアが開いた18分後だった。「時間はプレッシャーですが、乗車するお客さまから『ありがとう』と声をかけていただくとうれしい」。M野さんは充実した表情で列車を見送った。

photo 新大阪第二事業所ではホームやコンコースのごみ回収、整備なども行っている(関西新幹線サービック提供)

 第二事業所では約200人が働く。12人が1編成8両の整備を行う。M野さんは9時から午後6時45分までの日勤で、平常時で14本を担当する。整備時間はまちまちで、最も短いのはわずか6分。18分と同じ動きをしていては間に合わない。座席回し、掃き掃除、シーツの交換…。「車内に入った瞬間、どこの整備を優先するか判断しています」。入社は平成30年6月。経験がものをいう瞬間だ。

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