「パン屋」の倒産が急増、前年度の2倍で過去最多を更新 物価高も利益を圧迫

» 2024年04月11日 17時00分 公開

 「パン屋」の倒産が急増している。東京商工リサーチ(東京都千代田区)の調査によると、2023年度の「パン製造小売」の倒産件数は37件で、前年度の約2倍に急増し、年度では過去最多を記録した。コロナ禍では中食需要を取り込んで根強い人気を誇っていたが、特需や関連支援策が縮小・終了したことに加え、物価高も利益を圧迫する状況が続いている。

photo 「パン製造小売の倒産動向」調査(画像はイメージ、提供:写真AC)

 倒産推移を見ると、人手不足や消費増税の影響も受けた19年度は29件に増加したが、コロナ禍の20年度(17件)、21年度(13件)は2年連続で減少し、いずれも10件台にとどまった。物価高の影響が深刻化した22年度以降は、再び増加に転じ、23年度は過去最多を記録した。

 「物価高」倒産も21年度(0件)から22年度(5件)、23年度(10件)と増加が続いている。東京商工リサーチによると「コスト上昇分の価格転嫁は容易ではなく、集客と採算の間で板挟みになるパン屋の倒産は、今後も高止まりする可能性がある」という。

photo パン屋の倒産推移(出所:プレスリリース、以下同)

 原因別では、「販売不振」(32件)が最多となり、全体の86.4%を占めた。以下、「事業の失敗」と、代表者死亡などを含む「その他」(同2件)、「既往のシワ寄せ」(1件)と続いた。

 形態としては、「破産」(36件)が最も多かった。コロナ禍で業績が悪化し、立て直しが進んでいない事業者も少なくない中で、倒産したパン屋のほとんどは再建を目指すだけの余力もなく、消滅型の「破産」の選択を余儀なくされている。

photo パン屋の倒産(原因別)

 負債額別で最も多かったのは「1000万〜5000万円未満」(21件)で、「5000万〜1億円未満」(7件)と合わせると28件となり、4件に3件が負債「1億円未満」の小規模倒産だった。

 一方で、「1億〜5億円未満」が8件、「5億円以上」も1件発生した。自社でパンの製造から販売まで手掛けるパン屋は一定の設備投資も必要なため、負債がふくらむケースもあることがうかがえる。

photo 負債額別倒産状況

 従業員別で見ると、「5人未満」(30件)が最多となり、次いで「5〜10人未満」(4件、前年度同数)、「20〜50人未満」(2件)、「10〜20人未満」(1件)と続いた。「5人未満」の小規模事業者が81.0%を占めた。

 さらに、一大ブームを巻き起こした高級食パンブームにも陰りがみえていることから、同社は「新たな需要の創出やコスト管理、価格転嫁など、パン屋に課せられた経営課題は多い」と分析する。

photo パン屋に課せられる経営課題は多い

 調査は、日本産業分類の「パン小売業」の23年度に発生した負債1000万円以上の倒産を抽出し、集計、分析した。

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