中国系企業が日本の“再エネビジネス”に食い込む 「透かし騒動」から見る実態世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)

» 2024年04月12日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]
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事業推進だけでなく、対策も徹底すべきだ

 日本政府は、エネルギー政策の基本的な方向性として「2050年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量をゼロにすること)」を宣言し、環境対策が「社会経済を大きく変革し、投資を促し、生産性を向上させ、産業構造の大転換と力強い成長を生み出す、その鍵となるものです」と説明している。

 再生可能エネルギーを推進すれば、日本企業にもビジネスチャンスが広がる。太陽光エネルギーもその一つであるが、その機会を外国勢に奪われてしまえば本末転倒である。しかも、それが安全保障にも関わると指摘されているのであれば、なおさら対策は必要だろう。

「2050年カーボンニュートラル」を掲げて事業を推進しているが……(画像提供:ゲッティイメージズ)

 日本政府は22年4月から、FIT制度に加えて、FIP制度を導入している。これは発電事業者が、市場などに電気を売ることでプレミアム(補助金)を上乗せして受け取れるもので、FITの固定額での買い取りとはまた別の制度になる。どちらも再生エネルギーの普及という目的は同じである。

 筆者は、自然に配慮するために日本政府が進めている事業を、頭ごなしに批判するつもりはないし、中国企業を目の敵にして区別するつもりもない。ただ、重要インフラである発電施設の管理は、国民の生命財産を守るために、日本政府がきちんと取り組むべきだと思っている。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)、『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。

Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル


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