川勝知事が辞任しても、リニア着工は加速しないワケ困るのはJR東海側?(3/3 ページ)

» 2024年04月18日 08時00分 公開
[古田拓也ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

困るのはJR東海側?

 仮に、川勝知事の後任としてリニア推進派が圧勝した場合、困るのはJR東海側になる可能性がある。というのも、他の工区も遅延しているからだ。他の全部の工区が完成する見込みであり、静岡工区だけがスケジュール上取り残されているのであれば話は別だが、実態はそうではない。

 JR東海は4月4日の会見で、山梨県駅の新設と長野県内の座光寺高架橋などにかかる工事についても、開業予定の2027年までに工事を完了させることは難しいと明らかにした。

 3月29日には、丹羽社長自らが「静岡工区のせいで名古屋までの開業が遅れている」旨を発言したにもかかわらず、蓋を開ければそれ以外の工区も27年の開業に間に合っていない。4月4日の会見は、奇しくも3日の川勝知事の辞意表明をうけてのことのようにも思われた。

 他にも、度々中止された品川エリアの掘削工事なども8日にようやく再開され、静岡工区以外でも各所で遅れが目立っている状況だ。こうした状況を鑑みると、JR東海側が「静岡のせいにして工期が伸びれば、他の遅れも隠し通せるのでは」と第三者から穿った見方をされても仕方がない。

 リニア中央新幹線の完成に向けた道のりは、社会的な合意形成のプロセスだけでなく、技術的な挑戦も伴う。川勝知事のような影響力のある人物がいなくなったとしても、同氏の支持基盤となる静岡県民のリニア中央新幹線プロジェクトに対する関心や反対の声は消えることはない。

 むしろ「問題発言を全くしない、真っ当な反対派」が知事に選ばれたとしたら、リニアの完成は一層遠のくことになってもおかしくない。プロジェクトの成功に向けた道のりを左右する上で、静岡県民が「足を引っ張っている」というレッテルは何の役にも立たない。

 結局、リニアプロジェクトが円滑に進むためには透明性のある対話と相互の理解を深める必要がある。川勝知事の辞任があってもなくても、これらの課題に対する取り組みは継続されるべきだ。遅れの責任をなすりつけあっているうちは、リニア中央新幹線プロジェクトが加速することはありえない。

筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCEO

1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手掛けたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレースを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CEOとしてビジネスモデル構築や財務などを手掛ける。Twitterはこちら


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.