メニューたった3種類で急成長「鰻の成瀬」 東京チカラめし、いきなり!ステーキを反面教師にできるか長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/5 ページ)

» 2024年04月29日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

メニューはわずか3種類 職人なしでも提供できるワケ

 鰻の成瀬は、メニューが基本的に3種類しかない。「うな重(梅)」(1600円)、「うな重(竹)」(2200円)、「うな重(松)」(2600円)で、サイズ違いのみだ。他には、瓶ビール(700円)、冷酒(700円)、ノンアルコールビール(550円)などと、飲み物が数種類あるだけである。鰻は肉厚で、通常のものと比較するとサイズが1.5倍ほど大きく、2分の1尾が入っている梅でも、なかなか食べ応えがある。1尾を使う松ともなれば、鰻がお重に収まり切れなくて、はみ出ている。

日野店のメニュー

 メニュー構成が極めてシンプルであり、慣れない店員でも接客・調理しやすい。FBIの山本昌弘社長は「オーダーを間違ったという話を聞いたことがない」と豪語する。思い返せば「吉野家」もチェーン化した初期は牛丼のみで勝負していた。メニューを究極まで絞り込み、オペレーションを簡略化しているのが、スピード出店を可能にする成功要因の一つだ。

 ビールを瓶で提供するため、生ビールを注ぐ技術もいらないし、面倒なメンテナンスも必要ない。接客を担当するホール係は、誰でもできるといっても過言ではない。人材育成に注力しなくても、アルバイトで十分、現場を回せるのだ。

 とはいえ、メニューが超シンプルでも、鰻は「串打ち3年、裂き8年、焼き一生」といわれる、厳しい職人の世界だ。調理は素人でもできるのか。

うな重の梅。一番小さいサイズでもかなりのボリューム
うな重の松。ボリュームたっぷり

 結論からいうと、問題ない。そもそも、鰻の成瀬が登場する前から“鰻のファストフード”を標榜する「名代 宇奈とと」というチェーンもあったほどだ。名代 宇奈ととでは、コストの安い海外であらかじめ調理した鰻を輸入。店では、鰻の両面を備長炭で3分間さっと炙って、提供するシステムを整えている。うな丼を590円で提供しているが、鰻のサイズは小さめ。一番人気の「うな丼ダブル」は、うな丼で使う鰻を2倍使って1100円だ。

 牛丼各社でも鰻を提供している。「すき家」は「うな丼」950円、吉野家は「鰻重」1207円で食べられる。「松屋」も、夏場は「うな丼」を980円から提供していた。このような先例からも、さまざまな仕組みにより、鰻を職人要らずで扱うことは可能といえる。従って、職人を育てる人材育成も不要である。

うな重は、松竹梅の3種類を用意

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