FBIは、山本社長が鰻の成瀬のために起業した会社ではなく、FC展開の仕組みづくり、加盟店開発支援など、FC本部の後方支援をメインに2020年に設立した会社である。現在、サポートするブランドは60を超えている。
山本氏のキャリアは英会話の「ECC」からスタートしており、20代のころから、教室の責任者として運営を任されていた。ECCは英会話教室をFC展開しており、多大な利益を出していたことから、FCビジネスに興味を持ったという。
そこで、伸び盛りのFCビジネスとして「おそうじ本舗」を展開していたHITOWAライフパートナー(東京都港区)に入社。FCオーナー募集、スーパーバイザー、経営企画など、FCに関するあらゆる仕事に携わって、独立までの約10年間で店舗数は100店舗ほどから約1500店舗にまで急拡大。年商も50億円ほどだったのが、退職するころには約10倍の500億円に達していた。
当時の経験を生かしてか、山本社長がSNSで創業店・横浜店の売り上げを、良いときも悪いときも公表し続けていることは、鰻の成瀬FCオーナーにとっては安心材料だろう。4月23日は「97,900円 10万円まであと1人!惜しい!」、4月24日には「45,450円 雨に完敗です。悔しい…」(原文ママ)といったように、ありのまま報告するスタンスだ。ずっと追っていると、なぜ売り上げが増えたのか、または減ったのか、見えてくるものがある。
その横浜店は、オープン直後のにぎわいが落ち着いた後に低迷期を迎えたが、そこから立て直した後、FC募集を開始した。山本氏は、売り上げが伸びずに困っているFCオーナーに対して、直接自分に相談するように呼びかけている。横浜店の売り上げが落ちたときに打った対策を含め、これまでのFC支援の実績から、たいていのことには対処できるノウハウがあると自信を持っている。
FBIでは特に目標を決めていないそうだが、これから鰻の成瀬は店舗数をどこまで伸ばすのか。日本の外食店舗数を見ると約3000店舗の「マクドナルド」を筆頭に、1000店を超えるチェーンは11ブランドのみである。東京チカラめしもいきなり!ステーキも、このレベルの国民的チェーンになろうとしたが及ばなかった。乃が美やから揚げの天才は、売り上げが落ちてきた時期にゲームチェンジを起こせるような、第2、第3の矢となる新商品を開発できなかったことが敗因といえる。
鰻の成瀬も、いずれ踊り場がやってくる。その際に、同じ轍を踏まず、限界を突き破って国民的チェーンになれるか。理想のFCの在り方を追求する、FBI山本社長の手腕に注目したい。
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
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