メニューたった3種類で急成長「鰻の成瀬」 東京チカラめし、いきなり!ステーキを反面教師にできるか長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/5 ページ)

» 2024年04月29日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

「鰻」に注目した、3つの理由

 山本社長は、鰻に着目した理由を3つ挙げる。

 1つ目は、飲食業で立地が関係しない、珍しい業態だということ。ラーメン店やカフェならば、駅前の1等地でないと難しい。ところが、1等地はなかなか店舗物件が空かないので、スピーディに出店しにくい。一方、鰻の場合は、顧客が「鰻が食べたい」と明確な目的を持って来店するので、立地は関係ないと山本氏は考えた。家賃が安い2等・3等立地で、コロナの影響で撤退した店舗の跡地に、居抜きを基本に出店していったので、FCオーナーの負担も少なく、急速に店舗数を伸ばせた。

 2つ目は、1食5000〜6000円を取るような老舗の鰻店は、常連客で回っていて、“一見さん”にはハードルが高いこと。高級店は新規顧客を取るために、インターネットやSNSで宣伝をしないので、そこに集中して広告を投入すれば、一挙に市場が取れると考えた。

 鰻の成瀬では、プレスリリース配信サービスを活用して、新店がオープンするたびに発表している。そのため、オープンを告知する記事が、毎日のようにインターネットをにぎわせている。必要なときには、主要SNSのインフルエンサーを効果的に使って、店舗の売り上げを伸ばすためのコンテンツも作成しており、2023年12月からは、テレビCMも放映している。

郡山店外観(出所:プレスリリース)
郡山店の内部(出所:プレスリリース)

 3つ目は、ランチ中心に売り上げがつくれることだ。

 コロナ禍では、居酒屋など夜にお酒を飲ませる飲食店は、自粛を余儀なくされた。その代わりに昼間にちょっと良いものを食べたいといったニーズが広がった。鰻専門店は、そうした顧客ニーズに合致しており、鰻の成瀬の展開が始まる前から好調だった。

 鰻専門店は2000円と高額であっても、顧客からは安いと思ってもらえる。そんな特殊な飲食業態であることもポイントだった。

 横浜市内にあった「復興居酒屋がんばっぺし」が、コロナ禍で経営不振に陥ったことから、山本氏がスタッフと場所を引き継いで鰻の成瀬を立ち上げたという経緯がある。

 復興居酒屋がんばっぺしは、2011年7月に岩手県大船渡市出身のオーナーが、東日本大震災の被災者を集め、雇用創出を目的にオープンした居酒屋だった。居酒屋に匹敵する売り上げを、ランチ中心で、しかもお酒を飲ませずつくるには、鰻が最も有効な業態であったのだ。

横浜にあった、居酒屋がんばっぺし(出所:がんばっぺし公式facebook)

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