一方で、新興のフィンテック企業や異業種からの参入者がつまづく例も少なくない。規制に適応できなかったり、リスク管理に失敗したりすることが原因だ。直近では、LINEとみずほフィナンシャルグループとのプロジェクトだった「LINE Bank」は2023年に頓挫した。
異業種企業が銀行サービスを提供するには、金融サービスに関する専門知識、規制への対応力、リスク管理能力を担保する必要がある。これらが欠けていれば、無論、サービス品質の低下や消費者の信頼失墜につながる。
また、日本の金利が非常に低い状態が続くと、銀行の主要な収益源である利子収入が圧縮され、サービスの改悪につながるというリスクもある。新たに金融市場に参入する異業種企業は、認知獲得のために多大なマーケティングコストを必要とするはずだ。先述した銀行代理スキームを活用したとしてもである。
こうしたコストを回収したくても、低金利環境ではそれを補う十分な収益を上げることが困難になる。これにより、投資の回収期間が長くなり、事業の持続可能性が危ぶまれる可能性もある。
JRE BANKは、冒頭に紹介した特典の数々をあくまで(一時的な)「キャンペーン」とうたっているが、それを見たSNSユーザーが、恒久的なサービスと受け取られかねない形で喧伝している様子も散見される。
銀行側がキャンペーンについて誠実に告知していたとしても、そのサービスが終了した時、利用者にとって“改悪”と映れば、長期的なダメージは計り知れない。JRE BANKのケースに限っていえば、魅力的な特典がどの程度続くかについてもより明確に提示しておくべきかもしれない。
1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手掛けたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレースを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CEOとしてビジネスモデル構築や財務などを手掛ける。Twitterはこちら
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