見逃してはならない点は、JRE BANKの提供する各種「特典」は、額面よりも負担するコストが小さいことにあるだろう。
例えば、100円に対して1%、1円の利息をつけた場合、銀行の負担する金額は1円だ。しかしこれがもし、1%の利息分が原価率30%の商品やサービスであったとしたら、100円に対して銀行側が実質的に負担する利息は0.3円、実質的な利息は0.3%にとどまるわけだ。
つまり、製品やサービスがある事業会社は、原価と市場価格の認識ギャップを活用することで事実上の預金金利を低く抑えることが可能となるわけだ。もちろん、顧客側の認識としては実際に支払う金額で利息をイメージするわけだから、不満を感じることもないだろう。
金利が高いとき、多くの消費者はより良い高い金利を提供する金融機関を探そうとする。異業種の企業が銀行業に参入する際には、通常、彼ら独自の顧客基盤やブランドロイヤリティーを活用して、競争力のある金利やユニークな金融製品を市場に投入することで、新規顧客を引きつけ、市場での差別化を図ることもできるのだ。
異業種企業が銀行業に参入するもう一つの理由は、既存の顧客基盤を活用しやすいこともある。広範な顧客基盤を有する事業会社は、多様なサービスを提供することでスケールメリットを発揮できる。JR東日本のように、Suicaのような世界的にも優れた決済システムを活用している企業にとって、銀行事業への参入は必然だったのかもしれない。
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