商品開発、組織改革と矢継ぎ早に取り組んできた川原社長だが、「ほとんどはコロナ禍前なんですよね。派手なことを言えればいいのですが」と申し訳なさそうに話す。一方、コロナ禍ではとにかく守りに徹した。
「コロナ禍を乗り切るスタンスは、がっちりディフェンスすることでした。何よりも従業員の生活を守らなければいけないから、リストラはしないし、給料も下げない。そういった状態で2年、3年耐えられるのかという計算を先にしたんですね。結果、大丈夫だと分かったので人事面には手を出しませんでした」
実は、これはふくやの経営理念に通じるものである。
「きちんと利益を出して社会に貢献する。赤字は駄目だというのが大前提です。このような理念を守っていくために、とにかくつぶさない経営をしていました」
創業以来、代々受け継がれてきた“家訓”を忠実に守ったのだった。
しかしながら、ディフェンスを続けているだけでは大きな成長は望めない。時代に合わせて会社も変わっていかねばならない。新しいことに挑戦する攻めの姿勢は常に持ち続けている。
「創業者の理念は、事業で社会貢献する、余剰利益を地域のために使う。この2つですから。これさえ残っていれば別に明太子である必要はない」と川原社長は語る。
とはいえ、明太子は祖業であるし、最大の強みでもある。それを生かしながら、例えば、専門店だけでなくカフェの業態にもチャレンジするなど、もっと地域の人たちに来てもらえるような形に変えていく考えはあるという。売り上げはコロナ禍前の95%ほどに回復し、2024年度は約135億円の見通しだ。ここからは反転攻勢しかない。
かたや、福岡を代表する企業として、コロナ禍で痛手を負った地元事業者も見過ごすわけにはいかない。地域貢献に向けたふくやの取り組みについて、後編で詳しく見ていきたい。
伏見学(ふしみ まなぶ)
フリーランス記者。1979年生まれ。神奈川県出身。専門テーマは「地方創生」「働き方/生き方」。慶應義塾大学環境情報学部卒業、同大学院政策・メディア研究科修了。ニュースサイト「ITmedia」を経て、社会課題解決メディア「Renews」の立ち上げに参画。
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