先日も中高年の女性会社員に関する調査結果が公表され話題になりました。しかし、国や会社が描く多様性やD&Iが実現した輝く社会の対象に「50歳以上の男性」が含まれていないのと同じように「50歳以上の女性」も何一つ、期待されていません。
働く人の6割が40代以上なのに「50歳以上は用なし」とばかりに、企業は希望退職を拡大し続けていますが、そこに新たに加わるのが「女性会社員」です。
どんなに寿命が伸びようとも「年寄りは嫌われる」のです。
とはいえ総務省の「労働力調査」によれば、働く女性のうち45歳以上の割合は54%で、正規雇用に限っても約4割が45歳以上。2人に1人が、45歳以上です。
半分が45歳を過ぎた女性なのに、用無し扱いしてどうするというのでしょうか。
なんとも釈然としないことだらけですが、いかに中高年女性社員を用無し扱いすることが馬鹿げているかが分かる「50代の男性会社員と女性会社員」の意識を比較した調査結果を紹介します。
調査を行ったのは21世紀職業財団で、調査対象は300人以上の企業に正社員として勤務している(あるいは勤務していた)50〜64歳の男女の2820人です(「女性正社員50代・60代におけるキャリアと働き方に関する調査─男女比較の観点から─」)。
報告書の一部を抜粋すると、下記の通りです。
さて、いかがでしょう。これらの結果はごく一部ですが、中高年女性社員の成長欲が垣間見れるこの結果を見ると、いかにこれまで企業が人材を無駄にしてきたかが分かると思います。
私のインタビューの協力者は男性が圧倒的多数ですが、そんな中でも少数派の女性協力者にあって、男性にないものを肌で感じてきました。それが女性特有のものなのか、はたまたマイノリティー特有のものなのか判別できませんでした。しかし、340ページにわたる件の報告書が数値で明確に示してくれたのが、「成長欲」の違いです。
おそらくこの男女差の根っこには、「女性は永遠にベンチを温めるだけの存在だった」という、性差別と年齢差別による居場所の喪失感があるのではないでしょうか。
いずれにせよ、おばさんも、おじさんも、50歳を超えた途端、消える社会。
どちらも働く人の半数以上を占めているというのに。いったい誰が会社を支えるのか?
会社側はいい加減年齢差別を改めてほしいです。
ちなみにこの12年間で60歳以上の従業員は2倍、65歳以上は3.2倍と爆発的に増えました。年齢全体では1.2倍なのに、65歳以上は3.2倍です。
この現実に危機感を持たず、45歳や50歳を超えた社員に肩たたきをしたり、閑職へ追いやったりする企業に未来はない。あえてそう断言します。
【編集履歴:2024年5月14日午前12時20分 初出時、本文(21世紀職業財団の表記)に誤りがありました。お詫びして訂正いたします】
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)、『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか - 中年以降のキャリア論 -』(ワニブックスPLUS新書)がある。
2024年1月11日、新刊『働かないニッポン』発売。
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