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『アイドルマスター ミリオンライブ!』プロデューサー・わかちこPが明かす女性管理職の働き方仕事と育児を両立する「覚悟」(1/2 ページ)

» 2024年02月02日 08時00分 公開
[河嶌太郎ITmedia]

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 女性の社会進出が進んでいる。2021年の女性就業者数は3002万人で、過去最高を記録した。就業率は70.6%で、これは国際的に見ても低い水準ではなく、OECD(経済協力開発機構)諸国でも38カ国中13位だ 。

 ところが女性「管理職」の割合となると事情が異なる。企業の課長級以上の管理職に占める女性の割合は12.7%でG7では最下位。OECD諸国でも最下位レベルだ。この割合は産業別で大きく異なり、医師・福祉業では53.0%、生活関連サービス・娯楽業では24.6%と開きがある 。

 エンタメ業界を代表するバンダイナムコエンターテインメントでは、イベントやインターネット生放送などで積極的にファンの前に姿を現す「わかちこP」と呼ばれる女性プロデューサーがいる。「アイドルマスター(アイマス)」シリーズの1ブランド『ミリオンライブ!』の狭間和歌子プロデューサーだ。

 わかちこPは自身が司会を務める生放送で、19年11月に産休を発表 。その後、仕事と育児を両立する形で、1年半後の21年5月に現場復帰した 。プロデューサーとして、どのように仕事と育児の両立をしているのか。プロデューサーとしての働き方を聞くと、わかちこPの“覚悟”が見えてきた。1回目2回目に続き、お届けする。

photo 狭間和歌子 2007年バンダイに入社し、バンダイナムコゲームス(現バンダイナムコエンターテインメント)にて10年間家庭用ゲームの営業を担当。その後『テイルズ オブ』シリーズや、『ゴッドイーター』シリーズのアプリゲームのプロデュースを経験し、「アイドルマスターミリオンライブ! シアターデイズ」をリリース。現在は「アイドルマスターミリオンライブ!」プロデューサーおよび、「アイドルマスター」シリーズアニメ&マーケティング統括を担当

育児とプロデューサー業 どう両立した?

――わかちこPさんは07年にバンダイナムコに入社後、10年間の営業経験ののち、17年にアプリゲームの『アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ』(『ミリシタ』)のプロデューサーに就任しています。そもそもなぜバンダイナムコなどエンタメ業界を志したのでしょうか。

 『セーラームーン』や『DRAGON BALL(ドラゴンボール)』『幽☆遊☆白書』などを見て育った世代で、キャラクターが大好きだったからです。アニメやゲームIPのフィギュアやキャラクターグッズが大好きでアニメやゲームIPを活用した展開に携わりたい思いがあって、バンダイに入社しました。

 他にもバンダイの企業説明会で、働いている方がすごく楽しそうに仕事をしているのが伝わってきて、それも決め手になりましたね。

――最初からプロデューサーのような立場になりたいと思っていたのでしょうか。

 もともとは企画をやりたいと思っていました。

――最初の10年間は家庭用ゲームの営業に配属されたわけですが、嫌ではなかったですか。

 いや、全くそんなことはなかったです。当時は家庭用ゲームの企画を考えるにあたって販売店や小売店というユーザーや市場の情報の最先端で、何が求められているのかを肌で感じる必要性があると思っていました。なので、むしろ営業やマーケティングを経験したいと思いました。結果的に10年間で500タイトル以上の作品の営業企画を担当でき、より幅広いユーザーやマーケティング施策を知れたと思っています。

――その後『ミリシタ』のプロデューサーとしてユーザーと積極的に関わるようになります。エンタメ業界では、女性のプロデューサーはまだ多くなく、かつファンの前に姿を現して交流する人は少ない気がします。わかちこPさんは生配信で産休を公表するなど、女性の働き方のロールモデルを示していますね。

 19年の11月に「ミリシタ 秋の夜長の生配信〜オトナの魅力でお届けします〜」という生配信で、産休に入らせていただくことを発表しました。配信後SNSでプロデューサーの皆さん(「アイマス」では、プレイヤーがゲーム内でプロデューサーとしてアイドルと接することから、ファンのことを「プロデューサー」と呼ぶ)が、『ミリオンライブ!』を代表する楽曲「Thank You!」にかけ合わせて「産休プロジェクト」と名付け、「おめでとう!」と多くのコメントをくださったことは本当にうれしかったです。

 その後、21年5月の配信「ミリシタ 5月の生配信! 連休明けもミリシタですよ♪」で復帰を発表しました。

――子育てとプロデューサー業の両立は大変だと思います。

 前提として会社と家族の理解が重要だと思っています。自分がそういう働き方ができているのは、会社と家族がそれを許容してくれているからです。この「会社」というのは、組織だけでなく上司や部下、関係者も含めた全てを指します。身の回りの人が自分のこの働き方を理解してくれて、支えてくれているからに他ならないですね。

 子どもがいながらフルタイムで仕事をするには「覚悟」が必要だと思っています。自分が子どもと向き合う時間と仕事のバランスをどう取っていくかは、自分で意思決定しなきゃいけないと思うんですね。

 人は皆、同じ時間しか与えられていないので、それを何にどう配分するかは、自分が意志を持って優先順位をつけて、時間をマネジメントしなきゃいけません。ですから、そこに自分の意志を通す「覚悟」がない限りは、マネジメントできないと思うんですよね。

――「覚悟」というのは何なのでしょうか。

 「自分でやると決めたことはやり切る」という覚悟ですね。「『アイマス』でプロデューサーの皆さんに喜んでもらうためにここまではやろう」と決めたことをやり遂げる」という仕事における覚悟と、子育てでは「家族と向き合うと決めた時間を担保する」という覚悟を持つようにしています。

 仕事も育児も「自分が」やりたいことであり、「自分が」決めたことだからこそ、頑張れるのだと思います。その上で、会社と家族に理解してもらう必要があります。自分がやりたい働き方を会社や家族が理解を示し、支えてくれていることへの感謝の気持ちを込めて向き合うことも重要だと思います。

――「『アイマス』ではここまでやる」という覚悟は、どのように持っていますか。

 23年は『ミリオンライブ!』10周年をきちんと盛り上げ、アニメ3作品をリリースすることを「覚悟」としていました。24年からは、いよいよ『アイマス』20周年にむけた準備をスタートしています。20周年をきっかけに、支えてきてくださったプロデューサーの皆さんに感謝を伝え、一緒に盛り上げていきたいと考えています。

――女性の社会進出が叫ばれる一方で、子育てなどさまざまな要因から管理職になりたい女性が増えない課題もあります。

 現在「ミリオンライブ!」ブランドプロデューサーを務めながら、アイドルマスターシリーズのアニメ&マーケティング統括をしています。

 正直言うと、私も管理職になりたいと思ったことは全くなく、ただやりたいことをどんどん広げていくことに伴い、一緒に協力し、助けてくれる人数の規模や、動かす金額の規模も必然的に大きくなっていったと思います。

 このような機会を与えてくれたことに感謝しつつ、自分もマネジメントに関してはまだまだ勉強中です。一方で、社内の女性から働き方の相談を受けることも少なくありません。バンダイナムコエンターテインメントという会社にとどまらず、どの業界でも子育てと仕事のバランスの取り方は皆さん悩まれているのだと思います。

――特にエンタメ業界では週末にイベントなどで仕事があることも多く、大変だと思います。どのような働き方をしているのでしょうか。

 娘が保育園に通っていて、主人と交代で送り迎えをしています。主人がお迎えをできる日は残業をすることもありますが、自分が迎えに行く場合は、午後6時半で帰るようにしています。

 他にも、当社はフレックスな働き方もできますので、休憩時間の扱いで子どもを迎えに行き、帰宅後に業務を再開する働き方もできます。こういった柔軟な働き方を会社が許容してくれている支えもあります。

――子育てをしながら仕事をする上で、時間の使い方などで意識しているコツはありますか。

 思考する時間と手を動かす時間は、絶対に別にすると決めています。手作業をしながら思考をすると、とても効率が悪くなります。例えば何かの戦略を考えなきゃいけない時、アイデアを考えなきゃいけない時は、何もしない1時間を確保し、ひたすらに思いついたものをノートに書き出すとか、そういうやり方をしています。

 それがまとまってから、パワーポイントに落とし込んだり、ワードに文章にしてまとめたりするようにしています。

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