「Z世代」の新入社員と何を話せばいいか分からない……どう接すればいい?Q&A 働き方のお悩み相談

» 2024年05月10日 08時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]

連載:Q&A 働き方のお悩み相談

働き始めて間もなく10年、中堅社員として責任ある業務も任されるようになった。さらなるステップアップを目指したいけれど、何をすればいいのだろう。仕事も大事だけれど、プライベートも大切にしたい――。

キャリアアップ、ワークライフバランス、リスキリング……どうすれば自分が納得できるキャリアを歩めるのか。中堅ビジネスパーソンが抱く悩みに、長年、多くの人の働き方を見つめアドバイスしてきたワークスタイル研究家の川上敬太郎さんが回答する。

Q:新入社員の育成を任されましたが、関係構築に難しさを感じています。コミュニケーションを積極的にとることで、気負わずに仕事に取り組んでもらいたいと考えていますが、10歳以上も年下のZ世代の新入社員とは、趣味などの共通点がありません。プライベートに関する話題を振れば、どんな反応をされるだろうかという怖さもあり、なかなか会話の糸口をつかめずにいます。どうすればいいですか。

新入社員と会話の糸口がつかめず……写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

著者プロフィール:川上敬太郎(かわかみ・けいたろう)

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ワークスタイル研究家。1973年三重県津市出身。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関『しゅふJOB総研』所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ約50000人の声を調査したレポートは300本を超える。NHK「あさイチ」他メディア出演多数。

現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構 非常勤監査役の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。


【専門家の回答】コミュニケーションで最も厄介なのは……

A:Z世代という名の“個人”など存在しません。大切なのは、その人自身を知ることです。

 世代間のギャップは、いつの時代においてもコミュニケーションの壁になってきました。古代ギリシャの偉人も「最近の若者は……」と愚痴をこぼしていたと言われていますし、いま還暦を迎えている人たちは、若手だったころ上の世代から「新人類」と呼ばれていました。

 つまり、若手の育成には、これまでも常に世代間ギャップがつきまとってきたということです。

 しかし、人類は代々、文化や技術などを後進に受け渡してきました。これまでの歴史が、世代間ギャップは乗り越えられる課題であることを証明してくれています。かつて新入社員だった相談者さん自身が、いまは育成する側になっていることもその証拠の一つです。

 Z世代にはさまざまな特徴があると言われています。新卒入社してすぐに転職サービスに登録するような自律したキャリア観を持っている、個々の違いを認めて尊重する姿勢がある、新しい可能性に積極的に挑戦するところがある、などなど。

 ですが、それらはZ世代と括(くく)られた年代層全体に見られる傾向に過ぎません。一人一人に備わる個性に目をやれば、全く異なる特徴が見えてくるはずです。

 相談者さんが向き合わなければならないのは、目の前にいるその人自身に他なりません。同じZ世代でも、冒険心旺盛な人もいれば慎重な人もいます。それを「Z世代なんだから、新しいことにチャレンジしたいはずだ」などと決めつけると、事実を見誤ってしまうことがあります。

 コミュニケーションにおいて最も厄介なのが、この決めつけです。

 会話の糸口をつかめずに悩むのも、決めつけが邪魔している可能性があります。趣味などの共通点がないから話が合わないだろうと心配になるお気持ちも分かりますが、話してみる前から、10歳以上も年下のZ世代だから趣味などの共通点はないと決めつけてしまっているということはないでしょうか。

写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

 まずは目の前にいる相手のことを知らないという事実を受け入れ、その人が何に興味があって、どんな人なのかを知ることです。相手のことを知りたいと思えば、聞きたいことが浮かんできます。

 例えば、日ごろ頑張っている姿を見て、人一倍根性があると感じたら、学生時代に部活などで鍛えられたのかな、などと聞いてみたいことが浮かんでくるといった具合です。そんな風に手探りする中で「自分は中高とテニス部だった」などとこちらの情報も相手に伝えていくと、少しずつお互いについての情報が増え、コミュニケーションが交わしやすくなっていきます。

 他にも、出身地や行ったことのある旅行先、好きな食べ物、干支や星座など、年齢差に関係なく共通点はあるものです。逆に、共通点が全く無い人を見つける方が難しいのではないでしょうか。

 いまは動画配信サービスなどで過去のドラマやバンドなどに触れて、精通している若者もいます。Z世代の後輩が平成に流行ったトレンディードラマにハマっていると知り、親子ほど年の離れた先輩と好きなシーンで盛り上がったなんて話も耳にしたことがあります。

 意外な共通点が発見されると楽しいものです。互いに未知の領域を持ち合わせているからこそ、相談者さんと新入社員との間にも驚くような共通点が潜んでいるかもしれません。

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