ユーザー側のメリットは、加入が簡便であることだ。上述のランドセル購入から学資保険に加入する事例であれば、ランドセルを買った際に入力した情報を引き継いで簡単にオンライン上で加入できる。プラットフォーマーの活用方法によるが、購買時に付与したポイントを保険に充てられる事例もある。
リードインクスが提供するシステムは、グループ企業であるLINEヤフーのサービスに多く組み込まれている。中でも、中古品に対する保険が人気な商品の一つだという。
「Yahoo!ショッピングやYahoo!オークションでの需要は大きいです。中古商品を買うときに、壊れてしまう危険がありますので保険に加入してリスクを回避するケースが多くあります」
他にもYahoo!天気からは、熱中症保険の「熱中症お見舞い金」に加入できる。
柏岡社長は「気温が高い日に天気予報を見て、遠く離れた親御さんや、部活の合宿に行っているお子さんを心配され、その場で加入するということがあります。当初は(天気予報を見る)本人が加入することを想定していましたが、販売後こうしてご家族の方に加入していただくケースが多いことが分かりました。熱中症というリスクが想起されるタイミングに対し、保険の案内がうまくマッチしていると考えています」と話す。
保険商品を提供する会社にとっては、販売ルートが拡大するだけでなく市場の反響を得やすいこともメリットだと柏岡社長は話す。
「保険販売を代理店がやるのが日本のスタイルです。そのため、保険会社は商品の反響をダイレクトに得られないという一面があります。また、市場のスピードに合わせた商品開発が難しい、コストに見合わない。そういった点がエンベデッド・インシュアランスの普及で変わってくるのではないでしょうか」
今後の課題は、保険を提供するプラットフォーマーとなる企業を増やすことだ。
顧客接点がオンライン化することで「クロスセルができず、コストがかかる割にもうからない」「データはあるが有効活用法が分からない」と悩む企業に対し、保険を組み合わせることを提案したいと柏岡社長は語る。
「エンベデッド・インシュアランスは、顧客とのWeb接点が広がっていけばおのずと広まっていくと思います。どの法人も『お店に来てください』というコミュニケーションから『アプリで情報を届けます』『Webで案内します』というものに変わってきています。その過程で効果的な保険を展開できるようになると思います。
ただ『自社の事業×保険』で何かができると考えている事業者はまだ少ないので、さまざまな顧客接点を持つ企業と一緒に伴走して成功事例を作っていくことが先決だと考えています」
さまざまな事業者が、LTVの向上を掲げ“顧客の囲い込み”を重視し始めている。エンベデッド・インシュアランスの活用はその一翼を担うのだろうか。
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