約1年後(2024年5月)の次期社長就任に向けて、猛勉強がスタートした。西牧社長とともに、社外の関係先に挨拶に回った。経営を学んだ経験はなく、月に一度開催される経営会議では、知らない用語と、損益計算書など分からない数字ばかりで「毎回、泣きながら参加していました」と打ち明ける。
それでも分からないことが出てきたら、その都度、出席する幹部に質問を投げた。「会議を中断してしまうのは申し訳なかったけれど、分かったふりをして社長に就任するほうが、それこそ人に迷惑がかかる。今ここで少しの恥をかいておこうと思いました」(諸沢さん)
諸沢さんには、いつも心掛けていることがあるという。それは、即答すること。「目の前にチャンスが降ってきたら必ずつかむ。迷ったらダメ」
西牧社長から次期社長の打診を受けたときも、迷わず即答した。とにかく苦手を克服し、高みを目指したいという成長意欲が人一倍強いと自身を顧みる。
中学生のころ、運動が得意ではなかったが、あえて運動部を選び、バスケットボール部に入部した。体育の授業では、50メートル走で同級生に後れを取り、悔しくて「もう一度走らせてください」と先生に懇願したことも。「2回目も1回目と変わらず11秒でした」と笑いながら振り返る。
運動が得意になったわけではないが、当時の努力は「無駄だったとは思わない」と語る。「バスケ部で人一倍、声を出して応援したことが、今の接客に生きていると思います」
22歳といえば、いわゆるZ世代にあたる。コスパやタイパを重視し、業務における無駄を避けたいと考える人が多いと言われる。周囲を見渡せば、仕事よりもプライベートを重視する友達が多く、「仕事が大好き」な自分は「いまどきのマインドではないのかも」と諸沢さんは話す。
「社員、アルバイト、パートの皆さん、それぞれの働き方がある。自分の『仕事大好き』を押し付けようとは思っていなくて、それぞれに合った働き方を提案してあげたい」
いよいよ5月1日から新社長に就任。これから3年間は西牧前社長が会長として伴走する。当面の目標は、2024年中にまずは1店舗、新規出店を実現することだ。そのためには売り上げを確保し、店長クラスの人材を育成していく必要がある。
「社長になっても、現場に入って仲間と一緒に汗をかいて、お互い成長し高め合っていきたい」(諸沢さん)
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