むろん最近は日本でも、内部通告により企業の不正やハラスメントなどが明らかになり、経営サイドが責任を取るというケースも増えてきました。しかし、「内部通報制度が機能する=内部通報者が守られる」とは言い切れません。
大切なのは「勇気ある人」が不利益を被らないために、実効性のある制度を作ること。それでも「不利益を被った」と働く人が訴えた場合には、雇用主側に「不当解雇でないこと」を証明する責任を義務付けることが重要です。
組織という存在が「働く人=個」にとって、いかに大きなものなのか? を考えれば当然ではないでしょうか。
ちなみに、海外で行われた調査では、従業員が内部通報に踏み切れるか否かは「個人の正義感や道徳心」より、周囲の支持を得られそうかといった環境の影響が大きいと分かってます。
「内部通報をしたら組織から多くの支持が得られる」と予測した場合、人は実際に「おかしいことはおかしい」という当たり前のことを通報します。その具体的な行動が「自分で何かを変えられる」という自信と自己効力感を高め、結果、企業の成長につながっていくのです。
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)、『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか - 中年以降のキャリア論 -』(ワニブックスPLUS新書)がある。
2024年1月11日、新刊『働かないニッポン』発売。
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