「黒づくめの組織」が起爆剤に? 『名探偵コナン』の映画がヒットし続けるワケエンタメ×ビジネスを科学する(1/4 ページ)

» 2024年05月27日 08時00分 公開
[滑健作ITmedia]

 現在上映中の『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』の勢いは止まることを知らず、興行収入135億円を突破している。コナンの映画シリーズが連続して興行収入100億円を超える理由は、コンテンツ自体の魅力だけでは説明しきれない。

『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』 5月26日には2回目となる応援上映が開催された(公式Xアカウント@conan_movieから引用)

 この人気の背景には、2つの大きな要因があると考えられる。1つ目は、新規層を取り込むための多チャネルでの巧みなプロモーション活動である。2つ目はライトユーザーや新規層への門戸を開きつつ、原作の核心となるストーリーともひもづけた「原作連動」の構成を取っている点だ。

 本稿では、コナンシリーズの映画人気が顕在化した理由として、このプロモーション活動・作品構成の側面に着目していく。

「製作委員会」の強みを最大限に生かす

 1点目であるプロモーション活動においては、製作委員会参加企業による多チャネル展開が大きな強みとなっている。同委員会には地上波キー局の日本テレビ放送網が参画しているため、地上波放送に加え同社グループのサービスであるhuluなど複数のメディアリソースを活用できる。

 従来より、テレビ局が製作委員会に参画する映画作品においては、新作公開時に過去作品や関連特番を放映することがマスプロモーションの主流的な手法であった。コナンシリーズにおいても例外ではなく、毎年4月の新作公開にあわせ、前年度作品の再放送、映画関連エピソードの再編成、さらには特別番組の制作・放映と、多角的な宣伝施策を継続的に実施している。

 製作委員会参加企業の保有するメディアリソースを活用した一体的プロモーション展開という、伝統的だがいまだ効果的な手法が、コナンシリーズにおける映画マーケティング戦略の要諦(ようてい)となっている。

 それに加えて、昨今メディアとしての存在感を増している動画配信サービスで配信することで、スマートフォン中心となった現代の視聴環境にも対応している。特にHuluでは、4〜5月のキラーコンテンツとして君臨しており、最新の月間総合ランキング上位30作品のうち、半数を名探偵コナンの映画・TVシリーズが占める。

 なお、Hulu独占とせず、競合サービスのNetflixやAmazon Prime Video、U-NEXT、ABEMAなどへも供給している点も消費者にとってメリットが大きい。

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