リテール大革命

AI導入で自動化 それでも小売業には「人手」が必要なこれだけの理由Retail Dive(2/4 ページ)

» 2024年06月21日 07時00分 公開
[Daphne HowlandITmedia]
Retail Dive

セルフレジで従業員は不要になった?

 AI(人工知能)の影響力が増す中、小売企業の経営幹部はすでにAIへの投資計画を立てている。機械学習、AI対応技術、そしてRFID(電波を用いてICタグの情報を非接触で読み書きするシステム)のような旧来の技術は、在庫管理、価格設定、盗難検知など、人間だけではスピードが遅く正確性に欠ける作業のスピードアップや改良に役立っている。

 セルフレジは、おそらく店舗がテクノロジーの利用を拡大した最も分かりやすい例だろう。セルフレジは食料品売り場では主要なレジ形式となり、ディスカウントストアや量販店、アパレル小売店にも登場している。

写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

 しかし、セルフレジは、人間がテクノロジーに簡単に取って代わられないことを示す良い例でもある。

 Theatro社とCXを専門とする米調査会社Customer Management Practice(以下、CMP社)の調査によると、消費者はセルフレジなどのセルフサービスを高く評価している一方、コロナ禍以降、カスタマーサービスに対する期待が高まっているという。CMP社のマリオ・マトゥーリッチ社長は、ビデオ会議で次のように語った。

 「私たちの調査によると、セルフサービス体験に関して顧客が期待するものと、ブランドや組織が実際に提供しているものとの間には、大きなズレがあることが分かった」

 小売り向けソリューションを手掛ける米Aptos Retailの戦略担当副社長、ニッキー・ベアード氏によると、どのようなテクノロジーの導入にも複雑な問題がしばしば発生するが、顧客による利用を想定した場合は特にそうだという。

 「セルフレジなど、顧客のために用意された技術に何か問題が生じた場合、顧客は誰に助けを求めるのか。結局は店員を頼ることになる。そのような状況で、本当に誰かの生活を向上させることができるのだろうか」

 小売企業の効率改善を支援する英SeeChange TechnologiesのCEO、ジェイソン・ソウログロウ氏によると「結論から言えば、AIやその他のテクノロジーを導入すれば、店舗は従業員の数を減らせるというのは誤解だ」という。

 例えば、米小売りチェーンTractor Supplyは顧客サービスを高めるためにAIを導入した小売企業の一例であり、レジ待ちの行列が長すぎる場合に店員にアラートを発したりするためにAIを使用していると、2024年初めに開催された全米小売業協会(National Retail Federation)のビッグショーでハル・ロートン最高経営責任者(CEO)は述べた。

 ソウログロウ氏は「AIは、従業員の創造的、批判的思考、問題解決能力を活用することで、より価値の高い業務を遂行し、従業員が新たな成長機会を模索することを可能にする」とメール取材で述べた。

© Industry Dive. All rights reserved.

アイティメディアからのお知らせ

SaaS最新情報 by ITセレクトPR
あなたにおすすめの記事PR