1年前、採用プラットフォームの米Checkrは、小売業で働く人の74%が別の仕事を探しているか、転職を検討していることを明らかにした。
これにはいくつかの理由が考えられる。
2023年末、NRF(全米小売業協会)のデビッド・ジョンストン副会長は、米下院国土安全保障委員会のテロ対策・法執行・情報小委員会に対し、小売業界の組織犯罪や傷害・死亡事件への恐怖心が、店舗従業員の雇用に苦戦する大きな要因になっていると述べた。
同団体は、委員会への書面証言の中で、小売業には54万3000人の求人があり、「労働者不足は明らか」であると述べたほか、小売業の仕事は「高給」であり「成功するキャリアの基礎」であると説明した。
しかし、他の調査では、店舗従業員にとっての大きなネックは低賃金であり、安全性は最大の懸念事項には挙げられていない。近年、WalmartやTargetをはじめとする大手小売企業は、初任給を時給15ドル程度まで引き上げており、さらに高い賃金を義務付けているところもある。Costcoはこの分野のリーダーともいえる企業だが、多くの地域ではそうした賃金でさえ、依然十分な生活水準を維持できる生活賃金を下回っている。
米国勢調査局が12月に発表したレポートによると、2022年、小売販売員の実質所得中央値は2010年と統計的な差はなかった。レジ係は最も低賃金で、中央値は2万7174ドルとなり、フルタイムの通年労働者全体の中央値のほぼ半分である。人材紹介会社アデコによると、小売業における労働者不足は、低賃金が一因となっている。
WD Partnersのピーターソン氏は、待遇のよい従業員が好んで働く小売企業としてCostcoを、また店舗に有能なスタッフが多い小売企業としてAce Hardwareを挙げている。
しかし、賃金を引き上げた小売企業の中には、人件費を抑えるために雇用を減らしたり、シフトを短縮したりして、店舗運営に支障をきたしているところもあるという。
よい賃金は、小売業で働く人々を引きつけ、維持する上で重要だが、働く人々は他にもいくつかの条件を重視している。スイスのスタートアップ企業Scanditの調査によると、ワークライフバランス、競争力のある給与、使いやすい技術へのアクセスが、小売業における従業員の忠誠心を高める要因のトップ3であるという。
CMP社の調査によると、従業員の忠誠心を高める要因として、報酬は「良いマネジャー」「柔軟性」「キャリア開発の機会」に続き4位となっている。ピーターソン氏はまた、多くの小売店勤務を希望する人にとってブランドは最も重要であり、クールなブランドはそうでないブランドよりも採用面で有利になると考えている、と電話で語った。
Aptos Retailのベアード氏によれば、小売業者は店舗に十分な人員を配置すべきであると理解している。「問題はこのお金をどこから持ってくるかということだと」とベアード氏は話す。「今日私たちが直面している盗難やセルフチェックアウトなどの問題の一部は、賃金は上がったが労働予算が上がらなかったために発生したものだ。その当然の結果として、多くの小売業者は人員削減を余儀なくされている」
小売業に有効なAI活用は? Slackが指南する導入のヒント© Industry Dive. All rights reserved.
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