日本国内では2022年ごろから注目が集まり、その価値についての議論が盛り上がっているリテールメディア。筆者も、クライアントである小売業者の皆さまから「新しい収益の柱としてリテールメディアに期待している」という声を多く聞きます。
リテールメディアの果実を享受するには、その本質を理解し、広告を出稿するメーカーに確かな価値を提供しなければなりません。本稿では、日本のリテールメディアの展開にブレーキをかけないために、どんな点に気を付けて価値提供を行っていくべきか考えてみたいと思います。
気を付けるべきポイントを整理する前に、リテールメディアが持つ独自の価値についてあらためて述べておきます。それは、小売業界が蓄積する実購買データ(1st Partyデータ)を活用し、「認知」「興味」といった曖昧(あいまい)なデータではなく、間違いなくその商品を買ったという「意思決定そのもの」のデータを使って広告のターゲティングが可能であることです。
弊社のある飲料系クライアントは、この精度を上げることで施策のCVR(コンバージョン率)が60%を超えました。この数字は他の手法ではなかなか到達できない領域でしょう。
もう1つ、リテールメディアは購買に対する意識が能動的に高まっているときに接触させやすいメディアであるのも強力な価値です。基本的に他のメディアを通じた広告施策は、消費者がTVを見ている時、スマホで何かをしている時、その時間を奪うような形でメッセージを届ける場合がほとんどです。
対してリテールメディアはスーパーなどの店頭やアプリなどで展開されるメディアです。購買意識が高まっている消費者に向けて、さらにターゲティングされたメッセージを届けるわけですから、より自然な形で購買を促せるわけです。
リテールメディアの価値は主にこの2つです。これをベースに機能を拡充すれば、他のメディアを通した施策では到達できない効果を生み出し、価格競争に巻き込まれない価値を作っていけると考えています。
しかし、この2つの価値を磨くだけでは突破できない壁が、日本のリテールメディアには存在します。その壁とは次の3つです。
この壁を超えないことには、今後リテールメディアが日本で定着することはないでしょう。
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