トヨタ、お前もか 「不正撲滅は無理」と主張する豊田章男会長、支持率激減で試される覚悟(2/4 ページ)

» 2024年06月28日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]

オーナー独裁ではない、サラリーマン組織の暴走はなぜ起きた?

 不祥事発生の原因として組織風土が指摘される場合、その根源がオーナー系企業などにみられる「全権経営者」の暴走であることが多々あります。その代表例は、不当修理を繰り返して損害保険の代理店収入を稼いでいたと、2023年に大きな話題を呼んだビッグモーターです。

 特別調査委員会の報告書には、同族の経営陣がその強い立場を利用して社員に左遷や解雇を匂わせつつ無理な目標を強いたこと。それによって、不正せざるを得ない組織風土が醸成され企業が腐敗していったさまが生々しく書き連ねられています。全権を握る経営者の暴走は何者も止め得ないものであり、組織ぐるみの不祥事発生における最大の要因であるといえるのです。

 しかし、検査不正という組織ぐるみの不祥事が続発する自動車業界の場合は、少々事情が異なっています。各社は基本的にサラリーマン組織であり、全権経営者が暴走して悪しき組織風土を作っている、という事実は存在しません。では一体何が、組織的な不正を繰り返させているのでしょうか。その点について、日野自動車およびダイハツ工業におけるそれぞれの第三者委員会、特別調査委員会の報告書から読み取ることができます。

組織風土が助長した、納期のプレッシャー

 日野自動車の報告書では、経営層と現場に断絶があり、経営層が不正へ直接的に関与したことや圧力がかかったことは認定できなかったとしています。そして「上位下達の気風が強すぎる」との組織特性を指摘するとともに、その組織特性の下で現場が窮屈な開発スケジュールに無言で従わざるを得ない風土が醸成され、与えられた納期目標を達成するために検査部門が不正に手を染め続けていたという事実が明らかになっているのです。

 ダイハツ工業の報告書でも、酷似した指摘がなされています。同社では2000年代半ばにトヨタ出身の会長(当時)の下で開発納期の大幅な短縮を実施。その流れはトヨタの完全子会社化となった2016年以降さらに強まり、現場を圧迫したといいます。現場には「不合格となって開発、販売のスケジュールを変更するなんてことはあり得ない」という強迫観念が根付いてしまいました。そして、結果的に不正をしなければ納期目標を達成できないという流れが定着したのです。

 報告書が指摘する日野自動車・ダイハツ工業の両社に共通する問題点は、組織ヒエラルキーの下で経営層や管理部門に対する現場の畏怖の念が、自発的な不正を生んだ状況。そして、上層部や管理部門と現場との断絶および、部門間の横の連携や相互コミュニケーションの不足という、現場の孤立状態でしょう。

報告書では、経営層を強い口調で非難したダイハツ工業(同前)

 結果として、納期のプレッシャーにさらされた現場が不正に走らざるを得なかったという道を、両社ともたどったのです。ダイハツ工業の報告書では「責められるべきは、不正を行った現場の従業員ではなく、ダイハツの経営幹部である」と経営責任を重く見て、厳しく断罪しています。

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