トヨタ、お前もか 「不正撲滅は無理」と主張する豊田章男会長、支持率激減で試される覚悟(4/4 ページ)

» 2024年06月28日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]
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取締役の中で信任率は最低 豊田会長の覚悟が問われている

 高度経済成長を支えてきたわが国の大企業は、戦後復興期に旧日本軍や官僚制にならった組織を構築し「上位下達」「本社>現場」という、至って「日本的」な序列維持を暗黙のルールとしてきました。メイヤー教授は日本の組織文化特性を「無言のうちに人の行動を支配する傾向」と表現しており、まさしく、こうした歴史に見てとれるのです。

 この流れこそが、ワンマン経営者不在のサラリーマン企業においても、無言のヒエラルキーを構成し、不祥事を生む悪しき組織風土を育んでしまったといえるでしょう。自動車業界だけでなく、昭和を支えた大手製造業で検査不正などの不祥事が絶えないのは、平成を経て令和になった今も、その悪しき組織風土から脱却できない企業がいかに多いかを表しています。

 無言の不正を生む悪しき組織風土の改革には、ガバナンス強化という「守り」の対策だけでなく、誰もが言いたいことを言える組織風土づくりにつながる、心理的安全性の向上という「攻め」の対策も必要になるでしょう。

 豊田会長は会見で「不正の撲滅は無理だと思う」と、改革に向けて弱気とも受け取れる発言をしました。ガバナンス強化など守りの強化はできるが、根本の組織風土改革という攻めの対策はトヨタの企業文化ではできない――筆者の耳にはそう聞こえました。

 日本経済を支える世界に冠たるトヨタが、不正を生み出す悪しき組織風土を放置して良いはずがありません。二酸化炭素排出量の削減対策で自動車業界が100年に一度の大変革期を迎えている中、とても組織風土改革にまで手が回らないというのなら、トヨタをはじめわが国の自動車産業は一気に「負け組」に転落しかねないでしょう。6月の株主総会における、豊田会長の再任信任率は71.93%。前年比で10ポイント以上もマイナスかつ取締役中で最低となっており、株主も会長の一連の対応を厳しい目で見ていることが分かります。

 自動車産業は、わが国経済の屋台骨を支えてきた基幹産業です。その信頼が大きく揺らいでいる今、トヨタはその中核かつ日本の産業界をリードする存在であるという自覚を持って、攻めの組織風土改革にまい進して欲しいと切に願う次第です。

著者プロフィール・大関暁夫(おおぜきあけお)

株式会社スタジオ02 代表取締役

横浜銀行に入り現場および現場指導の他、新聞記者経験もある異色の銀行マンとして活躍。全銀協出向時はいわゆるMOF担として、現メガバンクトップなどと行動を共にして政官界との調整役を務めた。銀行では企画、営業企画部門を歴任し、06年支店長職をひと区切りとして円満退社した。その後は上場ベンチャー企業役員などとして活躍。現在は金融機関、上場企業、ベンチャー企業のアドバイザリーをする傍ら、出身の有名超進学校人脈や銀行時代の官民有力人脈を駆使した情報通企業アナリストとして、メディア執筆者やコメンテーターを務めている。


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