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精神障害者の離職率を下げるには? レバレジーズが示す成功へのヒント障害者雇用のいま(3/3 ページ)

» 2024年07月09日 09時50分 公開
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低い離職率を実現できたワケ

 先述のとおり、精神障害者の離職率は50.7%と極めて高い。そんな中、ワークリアの離職率は入社後3カ月で11.8%、1年で20.1%と、かなり低い。

 低い離職率を維持できる秘訣の一つが「マインド面の研修」である。マインド面研修は、入社時に実施する全8回構成の動画研修である。動画の内容は、新入社員や初めて就業に挑戦する人でも分かりやすいように、図や事例を用いた工夫がされてある。入社2週間までは毎朝必ず研修時間を設け、十分な余裕を持ってインプットできるようにしている。

 動画研修を受けるだけでなく、その後の第三者へのアウトプットを重視し、研修期間に担当者との面談(1on1)を毎週実施。研修で得た知識や仕事に対するマインドについて自分の言葉で表現し、それを受容する環境を整えている。

マインド面研修の様子(レバレジーズ提供)

 マインド面研修は、研修の終了後も週に1回、担当者との業務に関する振り返りを行う。実際、振り返りをしていると、自分のできないことに対して他責思考が強かったり、逆に過度に自責思考になったりするスタッフが多い。その結果、問題が解決しないまま話が進み、それがストレス要因になることは少なくない。

 しかし、他責や自責に陥った際に、入社時の研修を振り返ることで「研修ではこういう考え方を学んだが、それに照らし合わせると今回の原因は何で、どうすれば解消できると思うか」といった具合に、建設的な話につながりやすい。

 マインド面研修を通して、自然と自身を振り返る習慣がついた結果、第三者とのコミュニケーションに対する不安の軽減にもつながり、「横のつながりを重視した環境づくり」を実現することができる。就業経験が浅いからこそ、マインド面研修は困難に直面した際にそれを乗り越えるための基礎づくりになっている。

 また、精神・発達障害を持つ人は、障害特性によって対人関係に強い緊張や不安を感じるケースが少なくない。こうした特性から生じる当事者同士のコミュニケーションのすれ違いは、喧嘩やトラブルにつながるリスクがある。このリスクを避けるために、障害者同士のコミュニケーションに制限をかける企業も一定数存在する。

 一方、ワークリアでは、あえて、障害者同士のコミュニケーションを推奨し、コミュニケーションを取りやすい環境作りに注力している。実際、障害者同士のコミュニケーションの活性化は、業務における課題解決や業務連携の円滑化に寄与し、同時に、そのつながりが困難な状況に直面した際に助け合えるセーフティーネットとなっている。

 今後、法定雇用率の上昇に伴い、精神障害者の採用や定着に課題を感じる企業が増えると予想される。法定雇用率達成のためだけではなく、定着を見据えた採用を行うことで、障害者雇用が企業にとって「義務」ではなく「戦力」として位置づけられる世の中になるのではないだろうか。

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