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精神障害者の離職率を下げるには? レバレジーズが示す成功へのヒント障害者雇用のいま(1/3 ページ)

» 2024年07月09日 09時50分 公開

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 2024年4月、民間企業の「障害者雇用率」(法定雇用率)が2.3%から2.5%へ引き上げられた。40人以上の従業員を雇用している企業は、ハンディキャップがある従業員を1人以上雇用する義務がある。

 とはいえ、障害者雇用のノウハウが乏しく、働く環境づくりに悩む企業も多い。

 人材サービスのレバレジーズ(東京都渋谷区)は2018年から、障害者の就労支援サービス「ワークリア」を開始した。若年層で就業経験がほとんどない精神障害者らを中心に直接雇用し、PCスキルやビジネスマナーをレクチャー。総務や経理、営業などグループ内のさまざまな業務を請け負っている。これまでに、未経験から管理職への転身やレバレジーズ本体部署への異動など、活躍人材を11人輩出した。

 特徴的なのは、離職率を低く抑えられている点だ。障害の中でも精神障害の離職率は50.7%と高い。そんな中、同サービスを通じて就労した人材の離職率は入社後3カ月で11.8%、1年で20.1%と、かなり低い数値だ。

 なぜ、このような低い離職率を実現できているのか。レバレジーズ ヒューマンキャピタル事業本部でワークリア事業責任者を務める後藤祐介氏が解説する。

障害者雇用の低い離職率はいかにして実現可能か。ワークリアのオフィス風景(レバレジーズ提供)

著者プロフィール:後藤祐介(ごとう・ゆうすけ)

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ヒューマンキャピタル事業本部 ハタラクティブ及びワークリア事業責任者

京都大学を卒業後、大手ゼネコンを経て、2012年にレバレジーズへ中途入社。現在は「ハタラクティブ」と障害者の就労支援サービス「ワークリア」を統括するほか、営業システムの構築や教育制度設計、高校生や企業に向けたセミナー開催など、幅広い業務を担当している。2020年に中小企業診断士に登録。趣味はゴルフ。


拡大が見込まれる精神障害者の雇用

 昨今、精神障害者は増加傾向にある。厚生労働省の調査によると、精神障害者保健福祉手帳の交付台帳登載数は、10年で約2倍以上に増加した(※1)。

 OECD(経済協力開発機構)の調査によると、日本国内のうつ病・うつ状態の人の割合は、2013年調査では7.9%だったのに対し、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた2020年には17.3%と約2倍に増加したと言われている(※2)。

(※1)厚生労働省「令和4年度衛生行政報告例の概況」、(※2)OECD「メンタルヘルスに関する国際調査の結果

精神障害保健福祉手帳の交付台帳登載数の年次推移(平成25年度〜令和4年度までの衛生行政報告例の概況)

 2018年に精神障害者の雇用が義務化されてから5年が経過した。この間、精神障害者の雇用者数は2018年の約6万7000人から、2023年には約2倍の約13万人と年々上昇している(※3)。

(※3)厚生労働省「令和5年 障害者雇用状況の集計結果

 一方、身体障害者の雇用率はほぼ横ばいで推移。身体障害者の雇用の義務化は1976年に施行された。その他の障害種別の中でも雇用の義務化が早くから始まっていることもあり、すでに働いている人の割合が高く、労働市場に出てくる数には限りがある。

 また、身体障害の原因となりうる労災は自動化やICT化によって減少していることや、定年などの退職といった自然減が相まって、雇用数は減少に転じている。現在の身体障害者の7割以上が65歳以上ということもあり、今後も大幅な増加に転じる可能性は低く、減少傾向にあると予測される(※4)。障害者の雇用率がこのままの勢いで上昇を続けた場合、2016年時点では雇用されている障害者の約7割が身体障害者だったが、2032年には身体障害者と精神障害者の割合が逆転することが予測される(※5)。

(※4) 厚生労働省「障害福祉行政の最近の動向」、(※5) 直近の平均伸び率を基にワークリアが算出

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