豆本がいい感じで売れている、しかも若い人が注目している――このことに、JTBパブリッシングの担当者は目をつけた。というのも、『るるぶ』のメイン読者は30〜40代の女性である。「若い人にも読んでもらいたいという課題がある中で『るるぶ』の豆本があれば、若い人にも認知が広がるかもしれない」(ソリューション事業本部の南田裕介さん)と考え、商品化に踏み切ったのだ。
だが、しかしである。問題は知見がないこと。ガイドブックの製作には慣れているものの、豆本をつくった経験はない。どうしたらいいのかよく分からないので、ケンエレの担当者と議論を重ねていく中で、編集部が蓄積してきたデータに着目する。編集局には4万件ほどの観光データがあるので、そこからテーマを考えてつくればいいのではないか、というカタチで話がまとまった。
とはいえ、データは膨大である。豆本との相性がいいのはどんなテーマなのかを試行錯誤をしながら、作業を進めていった。たくさんのデータがある中で、同社は4つのテーマに絞ったわけだが、個人的に気になっているのは「観光道路」である。
耳慣れない言葉であるが、ひたすらまっすぐ続く国道であったり、カップルのメッセージが刻まれた街道であったり、ユニークなところばかりを集めている。「道路に注目している人は少ないはず。その道路を観光スポットとして紹介すれば、面白いのではないかと思って掲載した」(南田さん)
最後に、編集の苦労話を紹介しよう。「通常の旅行ガイドブックと違って豆本だからねえ」といった理由で、編集作業の手を抜くわけにはいかない。ガイドブックの製作と同じように、情報を掲載するにあたって、各施設からの許諾が必要になる。
「豆本に掲載していいですか?」だけではなく、「施設の特徴などに変化はありますか?」「料金は同じですか?」といった質問をして、情報をアップデートさせていった。こうしたやりとりを繰り返して、ガイドブックの2倍ほどの時間をかけて商品が完成したのだ。
担当者が“豆に働いた”ことで、生まれた一冊である。
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